韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長は、自他ともに認める「議会主義者」だ。金大中(キム・デジュン)元大統領のブレーンだった文議長は「全ての国事は国会で決定されるべき」という金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の言葉をひんぱんに引用してきた。与野党の国会内対話と妥協を通した政治を強調し、自ら実践してきた。

 文議長は、昨年7月に第20代国会の後半期議長に選出された際も、与野党議員の前で「対話と妥協、協治を通した国政運営は、第20代国会の持って生まれた宿命」と語った。韓国国民が選挙で多党制を選んだのだから、「家主たる国民が作った設計図に基づいて店子の国会が動くのは当然のこと」というのだ。与党には「政権2年目にもかかわらず野党のせいにしてはいけない」と言い、野党には「要求すべきは要求し、譲るべきは譲れ」と言った。与野党対立で国会が空転するたび、文議長は各党の代表や院内代表らと食事の席を設け「戦うにしても国会で戦おう」と語り掛けた。

 しかし、このところ文議長が見せている姿は、普段公言してきた「議会主義者」にふさわしいのかと首をかしげてしまう。与党が、「ゲームのルール」である選挙制度を野党第1党の同意なくファーストトラック(迅速処理案件)で処理したいと言い出したが、文議長はこれを支持するかのような態度を見せている。野党「正しい未来党」指導部がファーストトラックに反対する議員を委員会から強制的に辞めさせようとした件も、病院で決済した。国会法違反だという指摘はかなりあったが、文議長は「慣例」を掲げて許可した。国会法は、臨時国会での委員辞任・補任を禁止しており、議員自らがやむを得ない事由で申請した場合のみ認めている。「正しい未来党」指導部は辞任・補任申請書をファクスで送るという小細工を使ったが、すんなり受け入れられた。

同じ民主党出身の丁世均(チョン・セギュン)前国会議長とは対照的、という指摘もある。2017年2月、当時の丁議長は、自由韓国党を除く野党から「崔順実(チェ・スンシル)国政介入事件を捜査する特別検察官の時限を延長する法案を本会議へ職権上程してほしい」という要求を受けた。しかし丁議長は「一方的処理は反憲法的な振る舞い」であって、「交渉団体間の合意がなければ職権上程できない」と断固拒否した。同年5月には、自由韓国党が指導部に従わない金鉉我(キム・ヒョンア)議員を所属の常任委から強制的に辞めさせようとした。今回の辞任・補任と同じ状況だった。だが丁議長は「国会議員の良心を守ってやることが民主主義」として拒否した。

 文議長は、ファーストトラック推進に抗議する林利子(イム・イジャ)議員の顔をさすって「セクハラ」論争にまで巻き込まれている。セクハラの意思がなかったとしても、病院へ行く前にまず謝罪からやるというのが、普段の彼らしい行動ではなかったか。文議長は昨年9月、自由韓国党の金聖泰(キム・ソンテ)院内代表(当時)が「青瓦台(韓国大統領府)のスピーカーを自任している」と非難した際、「国会議長を侮辱したら国会が侮辱されるという事実を心に刻め」と言った。こういう誤解がもっと大きくなってしまう前に、文議長自身が成熟した「議会主義者」の姿を示してくれることを期待する。

政治部=キム・ギョンピル記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/04/26/2019042680099.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/04/26 19:40

※お断りERRORで立てれない記事↓
【社説】ファクスで法案提出、議長が病床で決済…大荒れの韓国国会
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/04/26/2019042680059.html