【ソウル=名村隆寛】北朝鮮が短距離とはいえ、2017年11月末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15号」の発射以来、約1年5カ月ぶりに数発の飛翔体を発射した。

 ただ、日本領域や排他的経済水域(EEZ)への飛翔体の飛来は確認されず、航空機や船舶への被害報告もない。飛翔距離が短いため、韓国を牽制(けんせい)した発射である可能性がある。

 北朝鮮と韓国は4月27日、軍事境界線がある板門店で開かれた南北首脳会談から1周年を迎えた。韓国側はこれを機に板門店での記念行事を呼びかけたが、北朝鮮は返答せず、韓国単独での式典が行われた。

 2月末の米朝首脳会談が物別れに終わり、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は対米交渉の仕切り直しを迫られている。

 北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は4月29日に掲載した論評で「最近、北南宣言に反し、危険な軍事的動きを見せ、不純で対決的かつ凶悪な下心を引き続きさらけ出している」と韓国軍を非難。「米国とともに外見を取り換えただけの合同軍事演習を強行し、軍事的敵対行為に執拗(しつよう)にしがみついている」と批判した。

 北朝鮮はトランプ米大統領や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対する批判は避けているが、短距離の飛翔体にとどめるかたちで牽制の対象を韓国にとどめたとみられる。北朝鮮は4月17日に金正恩氏が立ち会う中で「新型戦術誘導兵器」の発射実験を行っており、これとの関連性も注目される。

https://www.sankei.com/world/news/190504/wor1905040032-n1.html
産経新聞 2019.5.4 15:20