習近平中国国家主席の訪朝について、韓国大統領府と外交部(省に相当)は18日、「非核化の対話に役立つだろう」「良い兆しだ」と歓迎した。しかし、内部的には困り果てている様子がありありと見えた。習近平主席の電撃訪朝(20・21日)で、ドナルド・トランプ米大統領の訪韓(29日ごろ)前の「ワンポイント南北首脳会談」開催を推進していた政府の計画が事実上、水の泡になったからだ。さらに大きな問題は、米中間の貿易・技術摩擦で身動きが取れなくなってきている状況で、伝統的友好国との関係までギクシャクしてきたということだ。外交関係者の間では「韓国外交の立ち位置が分からない」という言葉がささやかれている。

習近平主席の訪朝について、韓国政府は発表直前に通知を受けていたことが分かった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は12日、ノルウェー・オスロで、韓米首脳会談前の南北首脳会談開催の可能性について「(北朝鮮の金正恩〈キム・ジョンウン〉朝鮮労働党委員長に)いつでも会う準備ができている」と言っていた。習近平主席の訪朝計画を知っていたなら、このような話はしなかったはずだとの指摘だ。習近平主席の訪朝とトランプ大統領の訪韓の間に南北首脳会談を開くことは物理的に不可能に近いからだ。

習近平主席訪朝で、「トランプ大統領訪韓前の南北首脳会談」開催という名分も消えたと見られている。外交消息筋は「南北首脳会談を推進したのは、韓米会談に先立ち、金正恩委員長の考えを直接聞いて米国にすぐに伝えるためだった。だが、韓国がしようとした役割を中国が取ってしまったことになる」と語った。南北首脳会談はもちろん、韓国政府が念入りに推進してきた習近平主席の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)前後の訪韓も、すべて失敗に終わったものと思われる。

問題は、南北関係を最優先にする韓国政府の基本路線により、対米・対日外交が非常事態に陥っていることだ。外交部(省に相当)当局者は同日、G20サミット時の韓日首脳会談や閣僚会談が開催されるかどうかについては「何も決まっていない。まだ十日間ある」と述べた。G20サミットを目前にして、主催国・日本との会談日程も決まっていないというのは極めて異例だ。

中国と連日衝突している米国は「反ファーウェイ(華為技術、Huawei)」への賛同を要求しているが、これをためらう韓国に不満を隠せない。今月末訪韓するトランプ大統領は「反ファーウェイ」のほかにも南シナ海「航行の自由」作戦支持、在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)正式配備、防衛費分担金大幅増額などを強く要求してくると見られる。さらに悪いことに、韓国政府は先日の「(中国)ファーウェイ社製品は軍事安全保障に影響がない」という発言などで米国の反発を買っている。

韓米日3カ国共助が乱れている一方で、中朝露は密着している。「韓米日」対「中朝露」という伝統的対立の構図から、韓国だけが外れた「米日」対「中朝露」の構図が鮮明になってきたのだ。韓国をめぐる「はざま論」「外交失踪論」がささやかれている背景にはこうした構図がある。

米中首脳とも「我々の味方になれ」と要求している状況で、文大統領が依然として「仲裁者」を名乗れるかどうかも疑わしいと指摘されている。魏聖洛(ウィ・ソンラク)元駐ロシア大使は「米中摩擦の中で習近平主席が訪朝すれば、韓国の『仲介者』という立ち位置がさらに狭まるだろう」と語った。19日にはソウルで韓中経済共同委員会が行われる。外交部当局者は「(ファーウェイなど)5G(第5世代移動通信)問題は議題に入っていない」と言ったが、外交関係者の間では「中国はこの問題を採り上げるだろう」との見方が多い。

韓国政府「唯一の希望」である南北関係も思い通りには進んでいない。「ハノイ・ノーディール」(第2回米朝首脳会談決裂)以降、南北対話を中断している北朝鮮は、韓国政府の食糧支援の提案やアフリカ豚コレラ防疫の提案などに沈黙を守っている。北朝鮮が今回の習近平主席訪朝に迅速に合意したのには、米国の見解を大幅に反映させた最近の文大統領の発言が影響を与えたとの見方もある。文大統領は先週、ノルウェーのオスロで北朝鮮に向かって、「実質的な非核化意思を見せよ。まず実務交渉し、その後にサミットだ」という原則を強調した。北朝鮮に近づけば米国が警告し、米国と歩調を合わせると北朝鮮が反発するというジレンマに陥っているのだ。

2019/06/19 11:20
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