日本政府が半導体の原材料などの輸出規制を4日から強化したことを受け、韓国政府は緊急の会議を開き、日本政府に対し今回の措置の撤回や2国間協議に応じるよう求めることなどを確認しました。また、韓国大統領府は「報復的性格の措置だ」として、WTO=世界貿易機関への提訴など外交上の対応策を講じていく方針を示しました。

日本政府は「信頼関係が著しく損なわれた」として、半導体や有機ELパネルの製造などで使われる、▽フッ化ポリイミド、▽レジスト、▽高純度のフッ化水素、の3品目について4日から韓国への輸出規制を強化しました。

韓国の産業通商資源省は、国内経済への影響や今後の対応などを話し合うため、4日、ソウルで関係機関を集めて緊急の会議を開きました。

冒頭、ユ・ミョンヒ(兪明希)通商交渉本部長は「日本が不明確な理由で、一方的に韓国に対してだけ輸出規制を強化したことはWTOの規定に合致しない。日本はみずからが主導したG20サミットの合意に反する矛盾した行動をとってはならない」と強く非難しました。

会議では、日本政府に対し今回の措置の撤回や2国間協議に応じるよう求める一方、韓国政府として、半導体の原材料の輸入先を多角化するなどの対策を近く発表することを確認しました。

また韓国大統領府は、定例のNSC=国家安全保障会議で「WTOのルールと国際法に反する報復的性格の措置だ」として、WTOへの提訴や主要国に対する説明など、外交上の対応策を積極的に講じていく方針を示しました。

90%超を日本に依存の原材料も

日本が輸出規制を強化した半導体の原材料などになる3品目のうち、2品目で韓国は90%以上を日本に依存しています。

韓国貿易協会によりますと、テレビやスマートフォン向けの有機ELパネルなどに使われる「フッ化ポリイミド」のことし1月から5月までの日本からの輸入額は1214万ドル余り(13億円余り)で、全体の93.7%を占めています。

半導体の基板に塗る感光液として使われる「レジスト」は、2010年以降、韓国の輸入額の90%以上を日本が継続して占めています。

ことし1月から5月までの日本からの輸入額は、およそ1億350万ドル(110億円)で、全体の91.9%となっています。

一方、半導体の基板を洗浄するのに使われる「高純度のフッ化水素」は、2010年に輸入額のうち日本が72.2%を占めたあと、長期的に見ますと日本の割合が落ち込む傾向にあります。

ことし1月から5月には、韓国の輸入額全体のうち43.9%にあたる2843万ドル余り(30億円余り)が日本となっています。

ムン大統領 輸出規制には言及せず

韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は4日、ソウルにある大統領府でソフトバンクグループの創業者、孫正義社長と会談し、AI=人工知能や韓国のベンチャー企業への投資などについて意見を交わしました。

日本による、半導体の材料などになる3品目の韓国向けの輸出規制が強化される中、会合でのムン大統領の発言が注目されましたが、韓国大統領府の発表によりますと、この件について具体的な言及はありませんでした。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20190704/k10011982481000.html?utm_int=news_contents_news-main_006
NHKニュース 2019年7月4日 18時29分