参院選の投開票から一夜明け、22日自民党総裁として会見した安倍首相は「安定した政治基盤の上に、
新しい令和時代の国造りを進めよとの力強い信任を頂いた」と強がったが、その表情に余裕はなかった。

会見の前に行われた自民党役員会でも神妙な面持ちだったという。安倍周辺は「米国のボルトン大統領補佐官が来日している。
ホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合の件など、選挙後は難題山積」と解説したが、理由はそれだけじゃない。

参院選でなりふり構わぬ禁じ手を次から次へと繰り出したのにもかかわらず、結果は3年前からわずか1議席増。
4選への求心力維持を念頭に狙った60議席にも届かず、想像を超える民意が安倍自民に「ノー」を突き付けたことを、
安倍本人も自民党の幹部たちも分かっているから青ざめているのだろう。

禁じ手の中でもヒドかったのが韓国叩きだ。G20の議長として「自由で公正な貿易」を宣言した2日後、舌の根も乾かぬうちに、
半導体材料の対韓輸出規制強化を発表。

元徴用工訴訟問題などでギクシャクする韓国に打撃を与えるのが真の目的で、
参院選公示直前というタイミングでの“報復”が、嫌韓の安倍シンパを喜ばせ、選挙での支持拡大に利用しようとしたのは想像に難くない。

狙い通り、テレビはワイドショー中心に一斉に韓国バッシングを始め、識者も「約束を守らない国」
「日韓請求権協定で済んだ話を蒸し返している」と解説して盛り上げたのだが、安倍政権は図に乗ってやりすぎた。

河野外相が韓国の駐日大使を呼びつけて、話をさえぎる形で「極めて無礼でございます」とやった一件だ。

ノーネクタイでふんぞり返り、テレビカメラにあえて撮らせようとしたのか、報道陣の前で大使を糾弾。河野の方こそ礼儀知らずだ。
それが映像で流れ、さすがに有権者も「正体見たり」と嫌気がさした。

韓国叩きで日本経済にとっていいことは何もない。日本企業は顧客である韓国の電機メーカーを失うことになる。
その市場を狙って、既にロシアや中国がフッ化水素供給に手を挙げている。

政治評論家の森田実氏が言う。

「安倍首相は『日本のトランプ』になりたいんでしょう。偏狭なナショナリズムで極右を決起させ、国が二分されても構わないというやり方です。
トランプ大統領がイランや中国を攻撃するのになぞらえ、韓国をやっつけることで人気取りを狙ったのですが、
選挙結果を見る限り、そうした手法には一部の人しか共感しなくなっている。

参院で3分の2議席を割り込み、悲願の改憲を発議できなくなったのですからね。
ここまでやりたい放題でしたが、この先は逆風にさらされるでしょう。安倍首相にとって曲がり角の選挙になったのではないでしょうか」
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