「天皇の写真を燃やした」という誤った情報
 抗議の大きな矛先は、慰安婦問題をテーマにしたいわゆる「平和の少女像」をめぐってで、韓国との緊張関係が続いている時にけしからんという政治的反発が起き、河村たかし名古屋市長や菅官房長官ら政治家の発言がそれに火をつけて抗議電話が殺到するという状況になったわけだ。そこに天皇の写真を燃やす映像も流れていたらしいという話が加わって騒動が大きくなったのだが、でも天皇の写真を燃やしたというのは全くの誤解で、そういう事実はない。

 少女像と並んで、「昭和天皇の写真を燃やした」と抗議の対象になっていた美術家の大浦信行さんとは以前からの知り合いで、もともと「表現の不自由展」に出品することになったきっかけは、私が『創』に書いた記事だ。その記事を収録した私の新刊『皇室タブー』を大浦さんに送付し、8月3日に電話でそれについて話したのだが、まさにその電話の最中に、名古屋で大村愛知県知事が会見、中止を発表したのだった。

 私はウェブNHKで中継映像が流れるのを見ながら大浦さんと話していたのだが、その日までは「少女像の展示中止か」という話だったので、大浦さんもその前提で話していた。そして私が「大浦さん、これ少女像だけでなく企画全体が中止という発表だよ」と話すと、大浦さんは「え、それはありえない」とショックを受けていた。

 その後、8月4日か5日に津田さんから中止を説明する電話があったようだが、8月7日に議員会館での抗議集会で発言した別の出展者・中垣克久さんも、中止について出展者に事前説明がなかったことを問題にしていた。

8月7日に行われた院内集会(筆者撮影)
 ちなみにこの7日の集会は、「九条俳句」の支援活動をやってきた市民らが中心となって発足した「表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク」などが主催したもの。8月17日にも文京区民センターで映画上映と集会を開催する予定だ。

芸術作品を政治的文脈で矮小化
 さて大浦さんについて言えば、8月4日付産経新聞は、こう報道している。

《元慰安婦を象徴する「平和の少女像」のほか、昭和天皇の写真を燃やすような動画作品に批判が殺到するなど議論を呼んだ》

《軍歌や朝鮮民謡などが流れ、昭和天皇の肖像写真がメラメラと燃えていくーー。今回の展示で、批判の多かった動画作品のひとつだ》

 会場で見た客に話を聞いて記事にしたのだろうが、その動画で天皇の写真を燃やしていた事実はない。燃やしていたのは大浦さんの作品で、そこに確かに昭和天皇もコラージュされているのだが、「天皇の写真を燃やした」というのとは意味合いが違う。正確な報道にするために、せめて作品について説明する時に関係者に確認取材くらいはしてほしいと思う。

 なぜならば産経を見て4日に抗議電話を行った人もいたはずで、4日には抗議の約4割が大浦さんの作品に対してだったという。大浦さんはこう言っている。

「天皇制を批判するために天皇の写真を燃やしたという、そういう政治的な文脈で受け取られたのかもしれませんが、それは全く違います」>>2に続く
  
篠田博之 | 月刊『創』編集長8/8(木) 21:49 記事抜粋
https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20190808-00137629/
2019/08/09(金) 02:08:43.47
http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1565284123/