「日本は植民地主義を乗り越えるチャンス」…'日韓通'の韓国市民運動家が見る日韓の葛藤

日本の韓国「ホワイト国」除外決定により一層深まった日韓の葛藤。その発端となった昨年10月の韓国大法院判決の経緯と意味をよく知る「日韓通」の市民運動家に、現状と解決策、日韓市民連帯などについて聞いた。

12日、民族問題研究所で筆者とのインタビューに応じた金室長は、2018年10月の大法院判決について「日本の市民運動が無ければここまでできなかった」と、日韓の市民の成果であると何度も強調した。

さらに「判決は『65年体制』による日韓の政治的な結託、言い換えれば朝鮮半島の分断体制、冷戦体制を維持する日米間の軍事同盟が崩れてきた決定的な結果」と位置付け、理解を求めた。

その上で今を「当事者が生きている間に日本政府がこの問題を解決できる最後のチャンス」と見なし、「被告企業と原告側が判決にしたがい、賠償についての協議を始めることが重要」と訴えた。

そして「市民たちの連帯があれば、この問題を解決することができる。今本当に必要なのはその部分」としつつ、「日本では8月15日前後になると、原爆被害者や戦争被害についての番組で物語が多く語られる。その痛みを分け合う気持ちを持ってほしい。同じ場所で苦労した韓国の人がいる」と、政府の問題ではなく人間の、そしてヒューマニズムの問題であることを強く主張した。

以下は詳細なインタビュー。

(1) 2018年10月の韓国大法院判決をどう受け止めたか。

基本は1997年から日本で裁判をやって、日本の最高裁で負けて2003年から韓国に舞台を移して続けてきた。90年代以降の、日本の市民社会と韓国の市民社会が戦ってきた結果だ。1991年の金学順さんのカミングアウト(※1)から始まった戦後補償の運動、つまり民主化した韓国で、それまで話すことができなかった韓国の被害者がみずから声をあげたのが始まりだった。

裁判の過程で(1965年の)請求権協定が壁になったから、当時の日韓会談で何があったのか話をしましょうと情報公開を求める流れになった。そして裁判の結果、韓国政府の資料が公開され、そこから「慰安婦」、サハリン残留韓国人、原爆被害者の補償問題が明らかになり、韓国の憲法裁判所から「韓国政府が日本政府に対しはたらきかけるべきだ」という違憲判決(2011年)を引き出した。

その間、日韓の政府がやったことは一つもない。すべてが被害者、あるいは日韓の市民社会が闘って勝ち取ってきたもので、そうした結果が、2018年の10月31日の韓国の大法院の判決といえる。

※1:金学順(キム・ハクスン、1924~1997)。韓国の女性運動家。1991年に韓国で初めて自身の日本軍「慰安婦」としての経験を証言し、日本政府を相手に訴訟を起こした。これにより、同様の被害にあった人々が韓国以外の国からも名乗り出、問題が表面化した。証言をした8月14日は2018年に韓国政府により「慰安婦被害者を悼む」国家記念日に指定された。

(2) 大法院の判決について、日本政府は今なお「65年協定でこの問題は完全かつ最終的に解決済み」という立場を崩していない。

知っての通り今、日本政府が強硬な態度に出ている。こうした状態で韓国政府が代わりにお金を出す場合、「日本政府の脅かしに屈服した」と受け止められる。このため日本側が強く出るほど、韓国政府の動ける範囲を狭めているという部分がある。

さらに日本側が一方的に請求権協定の3条に基づいて対話を求めているが、今回の判決は請求権協定の外にあるため、韓国側ではそれに当たらないという解釈だ。だが、何らかの形で政府としても話し合いをする必要がある。

強制動員について日本政府の責任もある。政府の許可がないと、日本の企業も人を使えないのは歴然としている。日本政府がやるのは資料を提供すること。歴史問題の解決に求められるのは「正義」に対する気持ち。被害者が何を求めているのか考えることなどだ。


>>2に続く

https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190814-00138415/