韓国の文在寅大統領は悪化が続く日韓関係の修復に、本気で取り組むのか。具体的な行動をとらなければ、日本側の不信はぬぐえない。

 日本統治が終わったことを記念する「光復節」の式典で、文氏が演説した。「今でも日本が対話と協力の道へと進むならば、喜んで手を取る」と強調した。

関係悪化の原因が日本にあるかのような言辞は受け入れられない。


 日本は、韓国の貿易管理制度と運用に不備があると判断して、優遇措置を取り消した。輸出管理の厳格化であり、韓国側が主張する輸出制限にはあたらない。

 日本が今月上旬に半導体材料の対韓輸出許可を出したことからもそれは明らかだ。文氏が演説で、日本を念頭に「自国が優位に立つ部門を武器として使うならば、自由貿易の秩序は崩れる」と述べたのは、的外れな批判である。

 韓国政府がまず、貿易管理体制を見直し、日本との信頼関係の回復に努めるのが筋だろう。

 文氏は今月初めには、日本の輸出関連措置を「盗っ人 猛々 たけだけしい」と非難し、「我々は日本に打ち勝てる」と、韓国国民の反日感情を 煽 あおっていた。日本との円滑な意思疎通を模索する姿勢には程遠い。定見に欠けるのではないか。

 問題は、韓国人元徴用工の訴訟を巡り、韓国政府が有効な善後策をとっていないことだ。文氏は、今回の演説では言及を避けた。

 韓国最高裁は昨年、日本企業に賠償支払いを命じた。日韓請求権・経済協力協定に反する判断であり、日本は韓国に対して、日本企業が不当な不利益を被らないようにする措置を求めている。

 文氏は、対日関係改善を望むのなら、両国関係の法的基盤である協定を尊重すべきだ。

 今回の演説は、北朝鮮を巡る現実を直視せず、民族主義に基づく甘い認識に終始していた。南北間の経済協力が発展して、「平和経済」が始まれば、「統一が自然と現実になるだろう」と述べ、バラ色の未来像を描いた。

 北朝鮮は核保有に固執し、国連から厳しい経済制裁を科せられている。短距離弾道ミサイルの発射を重ね、韓国への揺さぶりを強めている。最近は文政権の対話呼びかけにも応じていない。

 それでも、核とミサイルで周辺国を威嚇する独裁国家と協力し、統一を実現するというのか。

 文政権がとるべき政策は、北朝鮮の軍事的脅威を真剣にとらえ、脅威を削減する必要性を金正恩政権に説いていくことである。
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