日韓関係を修復するための4つの提言
韓国はどこへ行くのか?日本は何をすべきか?

● 1.日韓関係の修復には、双方の歩み寄りが必要

 9月末の国連総会には、安倍総理も文大統領も出席してそれぞれ複数の外国首脳と会談したが、二人の会談は行われなかった。

 米韓首脳会談においても日韓関係は話題にならず、世界のほとんどの国が、日韓関係には関心がないのが事実である。

 今日、米国と欧州の有力紙における国際問題の報道や解説の中心は、イランの動向をはじめとする中東情勢であり、東洋の片隅で行われている日韓間の小競り合いがニュースになることはめったにない。

 この日韓間の意地の張り合い状態に関して、一時は米国や中国が仲介の姿勢を示したこともあったが、日韓双方とも外国による仲介には消極的であり、今やこの問題は両国自らが努力するしか方法はない。

 この観点からは、26日にニューヨークで行われた茂木新外相と康韓国外相との会談において、主要争点については平行線をたどったものの、未来志向の日韓関係を目指して外交当局間の話し合いを継続することで一致したのは、大いに歓迎すべきである。

 二国間問題の解決のためには、両当事者が歩み寄りを示す必要があるが、現状を見るに、両国とも厳しい対決姿勢を示せば示すほど国内で支持率が上がる、という「いけいけドンドン」の雰囲気が背景にあることが懸念される。

 この状況が継続すると、韓国においては、来年春の国会議員選挙で与党の共に民主党が勝利し、その勢いで憲法を改正して文大統領の2期10年の独裁体制が築かれる可能性もある。

 他方日本においても、自民党党則を改正しての安倍4選も排除されず、次期衆議院選挙での勝利、さらには憲法改正へと進むことも視野に入る。

● 2.東アジアの安全保障構図の変化を懸念

 日韓の双方において国内情勢がそのように進展することは、民主主義社会における国民の支持に基づくものである以上、国民はそれを受け入れざるを得ないという考え方は当然あり得る。

 しかし東アジアの安全保障環境を俯瞰すると、日本にとって全く好ましくない状況が醸成される可能性が強い。

 現在の東アジアの安全保障は、「日米韓」と「中露北」の均衡による相互抑止が働くというものである。しかるに文大統領の究極の目標は、南北統一による主体性の回復であるが、北朝鮮が平和的に非核化を実施する可能性はまずゼロと考えざるを得ないので、核保有国としての統一朝鮮の実現が現実味を帯びてくる。

 韓国の歴史を改めて見ると、14世紀末に李成桂が高麗にかわって朝鮮半島を統一して李王朝を建設して以来、500年にもわたる明、清への冊封による属国化、その後の日本による併合、さらに日本の敗戦による南北分裂という歴史を通じて、真の独立と統一を実現できなかったところ、やっとその悲願の達成に向かってしゃにむに突き進む時期が来たと判断しているのであろう。そして安全保障の新たな構図として、核兵器に守られた3極、すなわち「日米」「中露」および「統一朝鮮」の並立を描いているのであろう。

 しかし北朝鮮が保有する核兵器及びその運搬手段を温存したままでの南北統一では、新国家の骨格に金正恩ほかの北の支配層とその思想が残ることは避けられないのである。文大統領はこれにより、統一朝鮮を、核についての主体性のない日本よりも上位に位置付けんとしているとも読み取れる。日本としては、中国、ロシア、統一朝鮮という3つの核保有国に囲まれるという構図は恐ろしい悪夢である。これは何としても妨げなければならない。


朝日新聞:論座
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019092600011.html?page=3