【11月22日 AFP】香港をほぼ6か月にわたって揺るがしている民主派の抗議デモは、中国国営メディアでは、外国勢力の支援を受けた残虐な「野蛮人」や「テロリスト」の仕業とされている。

 中国本土では、中国共産党が慎重に扱うべきだとみなしたあらゆる問題は、厳しく統制されて語られる。そうした本土での香港のデモ報道は、欧米諸国での報じられ方とは極めて対照的だ。

欧米のメディアは通常、香港での自由選挙の実現や、過剰だとデモ隊がみなす警察の暴力に対する独立調査の実施などデモ参加者らの要求を報じている。だが、中国のメディアは、こうした問題にほとんど触れていない。

 例えば、中国メディアがデモ参加者らを表現する時に頻繁に使うのは、「乱暴」「未開人」「テロリスト」といった汚名を着せる言葉だ。

 英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)は先週、「暴徒によって繰り広げられている残虐行為と狂気は、彼らが血に飢えて錯乱状態に陥っていることを示している」と断じた。一方、中国共産党機関紙の人民日報(People's Daily)は、「香港の暴力は、民主主義や自由、人権に反対する極右の示威行為となりつつある」と報じた。

 また中国政府のプロパガンダは、香港のデモ参加者らが欧米諸国に操られていると主張する。人民日報は19日の一面の論説で、欧米諸国の政治家らが香港の「反中勢力」を擁護していると、声高に非難した。

 中国メディアによるとこうした「黒幕」の目的は、2011年以降のアラブ社会を揺るがしたような「カラー革命」を引き起こし、香港を再び中国から分裂させることだという。

 そして、リビアやシリアでのそうした革命が内戦へと転じたことを持ち出し、集権主義体制下における中国の安定と対比してみせる。チャイナ・デーリーは今週、デモ参加者らが香港の大学のキャンパスを「シリアのような戦場」に変えたと非難した。

■中国メディアが語らないこと

 一方、中国メディアでは、平和的なデモに参加している何万もの人々が口にしている不満はほとんど報じられない。

 デモ参加者らの懸念は、1997年に英国から中国に香港が返還された際の法律によって香港に付与された特別な自由が、中国政府によって侵食されているという点に集中している。

 中国国営テレビはそうしたデモ参加者らの不満を無視する一方で、デモがもたらした日常生活の不便さを訴える香港市民の苦情は伝えている。

 中国共産党はメディアを通じて自国民に、香港のデモを模倣しないよう警告しようとしていると指摘するのは、フランス国立社会科学高等研究院(School of Advanced Studies in the Social Sciences in Social Sciences)の中国専門家、ミシェル・ボナン(Michel Bonnin)氏だ。

「中国政府にとって最も重要なのは、(デモが)波及する可能性を排除することだ」と指摘する。「だから(香港の)状況を可能な限り隠していた。それがもはや不可能となると、抗議運動を邪悪に描き、単なる外国の敵対勢力に操られた分離独立派の暴徒だとみせようとしている」

 人民日報系の環球時報(Global Times)は、混乱を収めるためには死者が出ることも想定した武力行使が必要だとし、「法を執行中の警官に対する攻撃や威嚇は、直ちに射殺されるなど、あらゆる種類の法的リスクに直面すべきだ」と主張する。

 さらに中国国営メディアは、軍による介入の可能性もちらつかせている。同じく環球時報は「暴徒らが破壊を尽くしている一帯は、深セン武装警察部隊(Shenzhen Armed Police Force)の最寄りの拠点から車ですぐの距離にあり、また人民解放軍(PLA)の香港駐屯地にはもっと近い」と記している。(c)AFP/Patrick BAERT

https://www.afpbb.com/articles/-/3255939
2019年11月22日 13:49

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香港・九龍地区のホンハムにある香港理工大学に行進中、警官隊の発射した催涙弾を浴びるデモ隊(2019年11月18日撮影)。(c)DALE DE LA REY / AFP