在日アメリカ人として、日米両国の書籍や資料から「20世紀の歴史の真実」を解き明かそうと精力的に活動するケント・ギルバート氏。去る2019年に日韓関係が「史上最悪」と言われるまで悪化した理由を考えると、文在寅大統領が就任後はじめて行なった「光復節」の演説に行き着くとケント氏は指摘する。

 文在寅政権の動きを見ていると、まだまだ国民の反日感情を利用して政権運営をしようという意志に満ちあふれていると感じます。

 2018年の元「徴用工」に対する賠償判決の確定、そして2019年に入ってからは、文在寅政権の唯一の「成功」だった米朝交渉、南北関係改善が行き詰まると、雪崩のように反日攻勢に出てきたのです。実はそのヒントは、2年以上前からわかっていたことでもあります。

 2017年8月15日、文在寅大統領は演説で、「2年後の2019年は大韓民国建国と臨時政府樹立100年」と明言しました。ここには強力な反日につながりかねない衝撃的な仕掛けがあったのです。

 日本で8月15日は「終戦の日」ですが、韓国にとっては「日本の植民地支配から解放された日」という意味を持ち、光復節という祝日になっています。そして、この日に大統領が行なう演説は、毎年歴史認識や外交関係にどう触れるかが注目され、特に2017年は親北反日反米政権と言われている文在寅大統領の初の演説だったために、何をどのように表現したのか、日本でも報じられました。

《中略》

「2019年を韓国建国100年にする」と明言したことにはあまり関心が集まりませんでした。

 しかし、これは日本に対する大きな問題となる可能性を含んでいたことが、いまならわかるはずです。

《中略》

建国の「精神」を1919年に求めることは可能かもしれませんが、実態のある国家としての連続性は、世界的に認められていませんし、韓国政府もそのように説明してきたはずです。そこにあえて文在寅は踏み込んでいたのです。

◆1919年以降の日本統治はすべてが「不法行為」?

 これが韓国における反日にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

 日韓併合条約は国際法上何も問題がなく、日本による朝鮮半島の統治は言うまでもなく合法でした。そこで日本が何をしたかを韓国人が批判することはできるかもしれませんが、日本が統治できる立場にあったこと自体は否定などできません。

 しかし、1919年に大韓民国臨時政府が設立され、それがいままで続いているという立場を取ると、1919年以降日本が朝鮮半島を統治してきた行為すべてが、本来の大韓民国の土地と国民を「不法に」統治し、韓国政府の主権を侵している「不法行為」だと定義できることになるわけです。

 ということは? 慰安婦問題も、「強制徴用」と韓国が主張している問題も、すべて不法な統治のもとで行われた行為のために、当時の日本による法令を守っていたかどうかを論じる必要がなくなります。そして日韓基本条約でも、その後の謝罪等も、「不法行為に対する損害賠償をしたものではない」と言い出せば、改めて賠償が請求できることになってしまうわけです。あくまで彼らの理屈のうえでは、ですが、ここ数年、元「徴用工」問題で韓国側が主張しているのは、すべてこのロジックに基づいているわけです。日本が「基本条約と請求権協定に違反している」と反論しても、韓国は「そもそも不法行為に関しては取り決めていない」というやり方で、事実上骨抜きにするつもりなのです。

 百田尚樹さんの話を借りると、それならば日本が行なったダムや治水工事、病院や学校の整備、植林や鉄道網の整備なども、すべて「不法行為」になるはずですが、そんな相手を一方的に利する不法行為があるのでしょうか。

 現在の韓国における反日は、左派の文在寅が右派を攻撃するための道具、レッテル貼りという側面もありますが、政権運営がうまく行かなくなるほど、国内世論への対策として反日を持ち出すことはよくある話です。つまり、文在寅政権は就任当初からいつでも反日カードを切れるよう、あらかじめ時限爆弾を仕込んでいたようなものだったのです。

◆ケント・ギルバート著『中韓が繰り返す「反日」歴史戦を暴く』(祥伝社新書)を一部抜粋のうえ再構成

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200122-00000003-pseven-kr

1/22(水) 7:00配信