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韓国人が最も怒る不正は“入学”と“徴兵”

 韓国人が最も怒る不正は入学と徴兵を巡る問題だと、韓国の知人たちは口をそろえる。誰もが良い大学に入りたい、誰もが徴兵から逃れたいと思うなか、ズルをする人間は許せない。特に、曹国の娘の場合、入った大学が、「韓国の早稲田」とか、「SKY(ソウル大、高麗大、延世大の略称。3校が最難関とされる)の一角」と呼ばれる高麗大だけに、若い人たちの怒りはすさまじかった。

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裕福な家庭の子は毎月、5万〜10万円を出して英語の個人レッスン

 韓国の街を歩いていて感じたのは、英語熱の高さだ。街の至るところに、「英語学院」の看板が立ち並び、街路灯にはよく「英語教えます」といった手製の売り込みチラシが貼ってある。韓国では、2歳ごろから英語教育を始める家庭もあるという。確かに、若い人たちを中心に英語は非常にうまい。昔、知り合いから「日本人の英語は、植民地パルム(発音)と呼ばれている」と聞かされたこともある。文法中心の教育を受けているから、発音がたどたどしいという意味だった。

 ただ、我も我もと英語を習おうとすると、どうしてもそこには所得格差の影が忍び寄る。知り合いの大学生に聞いてみると、中学生ぐらいで裕福な家庭の子は毎月、5万〜10万円を出してもらって英語の個人レッスンを受ける。まあまあ余裕のある家庭は2万〜3万円ぐらいで英語の塾に行く。それもままならない家庭は、1万円程度で英語の添削教育を受けるという。

 だから、こうした格差を埋めたいという父母の要望を受け、公立幼稚園でも毎日約1〜2時間、正規の授業とは別に外部の講師を招く課外授業を行っている。

 教育部は幼少時の英語教育の過熱を心配し、公立幼稚園での課外授業の廃止をもくろんだが、逆に保護者の猛反発を食らう結果を招いた。大統領府ホームページの「国民請願コーナー」には「教育の自由もない共産国家だ」「公教育だけ制限してどうする」といった非難の書き込みが相次いだ。

「ヘル(Hell=地獄)朝鮮」韓国社会に絶望する若者たち

 大学生たちに言わせると、就職活動の現場では、企業が求めるTOEICの最低スコアが700点なのだという。知人の大学生は「良い会社に入りたかったら900点ぐらい取らなければだめです」と言う。

 韓国は「ヘル(Hell=地獄)朝鮮」とか「金のさじ、泥のさじ(親が金持ちか、そうでないかで子どもの将来に大きな影響を与えるという意味)」などと言われるように、激烈な競争社会、格差社会。若い人たちは韓国社会に絶望し、海外移住や外資系会社への就職を夢見る。韓国の会社も「他の企業に優秀な人材を取られてはならない」と考え、自分の会社がいかに国際的に開かれた会社なのかをアピールする。だから、必要もないのに、入社時に高い英語力を求めてしまう傾向があるという。とても素晴らしい英語力を苦しんだ末に身につけても、就職先の会社で英語を使う機会に恵まれない人も多い。

SKYに入ったら入ったで、ひたすら子どもに尽くす父母

 さて、高麗大OBの知人の場合、高校生時代はたまたま学院通いが規制されていたため、生徒たちは朝7時に登校、授業を間にはさみ、深夜23時までひたすら教室内で自由学習に励んだという。どの子もみな、弁当を3つ持ってきていた。平均の睡眠時間は4時間あれば良い方だった。知人は「親も大変でしたよ。弁当つくったり、深夜に学校に子どもを迎えに行ったりで、ほとんど休めなかったんじゃないかな」と言う。

 SKYに入ったら入ったで、父母はひたすら子どもに尽くす。知人の場合、高麗大そばの立派なアパート(マンション)に住む学生を何人も見た。高麗大は地方出身者が多いため、ハスク(下宿)生も多いが、「苦労しないで、ひたすら勉強に励みなさい」と、子どもに尽くす親も多い。大学そばのアパートは1990年代当時、チョンセと呼ばれる、家賃を払う代わりに最初に一定額の保証金を納めて、家主がそれを運用して利ざやを稼ぎ、契約終了時に全額を返還するというシステムを取っているところが多かった。知人は「大体、その金額が安くても2億ウォンでしたね。地方の親のアパートのチョンセよりも高いところもあったようですよ」と語る。
「親にしてみれば、それで頑張って、良い職に就いてくれたら、もう万々歳なわけですよ。投資感覚ですね」

文春オンライン
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