韓米ミサイル指針が「固体燃料使用制限」を解除する側へと方向を定めたのに伴い、間もなく韓国の宇宙用長距離ロケット開発に青信号がともる見込みだ。韓国は、国産ロケット「羅老号」を液体燃料ベースで開発してきたが、複雑な構造と不安定性で数度にわたり失敗を繰り返していた。

液体燃料ベースのロケットは、推力は高いものの、燃料を注入して発射の準備を行う過程は複雑だ。その一方、固体燃料ベースのロケットは燃料注入の過程がなく、発射のプロセスも複雑ではない。

固体燃料ベースのロケット開発が完了すれば、1トン前後の小型衛星を高度600キロ前後の低軌道に打ち上げられるようになる。韓国政府が必要とする小型の偵察・通信衛星などを、安定的に宇宙へ打ち上げる基盤が整うというわけだ。

韓国航空大学航空宇宙機械学部の張泳根(チャン・ヨングン)教授は「固体燃料ベースの推進体を使えば、重さ500キロから1トン程度の小型衛星を安定的に打ち上げる基盤がすぐに整う」として「韓国航空宇宙研究院が現在推進中の羅老号に積む人工衛星も1.5トン規模で、固体燃料ベースの推進体技術を導入すれば発射は容易になるものとみられる」と語った。

韓国政府の関係者は「液体燃料ベースの羅老号だけをやるとしても、燃料の維持・注入のためかなりの技術・人材が必要」と語った。固体燃料に切り替えると、燃料注入・補完のプロセスがなくなるので費用も安くなる。

実際、日本は既に固体燃料ベースのロケット「イプシロン」を2013年に打ち上げたが、イプシロンの打ち上げ費用は主力ロケットH2Aに比べ3分の1の水準だったといわれている。

今回の指針改正は、中・長期的には米国の中距離核戦力(INF)全廃条約脱退とも方向性を同じくするものと解釈されている。韓国など同盟国が独自の中距離ミサイルを開発・配備すれば軍事的負担を減らせるので、米国は今回の改正協議に前向きな姿勢を見せたというわけだ。

韓国軍関係者は「いつでも、どこでも発射できる固体燃料ベースのロケットの開発は、長期的には韓国の国防力向上にも直結する」と語った。固体燃料ベースのロケットは有事の際、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用が可能だ。固体燃料ベースのロケットが開発されれば、理論的には発射台付き車両(TEL)を利用したICBM発射技術を持つことになる。

今回のミサイル指針改正は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が選挙公約として掲げた「任期中(2022年まで)の戦時作戦統制権韓国移管」の基調とも一致する側面がある。

韓東大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「ミサイル開発は少ない費用で敵を抑止できる、最も強力な手段の一つ」だとして「現政権が推進するいわゆる『自主国防』や、戦時作戦統制権の移管に最も必要な要素として、ミサイル指針改正が挙げられたのだろう」と語った。

ただし、中国との摩擦は危険要素に挙げられている。

韓国軍関係者は「韓国の固体燃料ベースの発射体開発を、中国が『米国側による中距離ミサイルの迂回(うかい)配備』の一手と考える可能性がある」として「防御兵器であるTHAAD(高高度防衛ミサイル)システムの配備だけでもデリケートな反応を示した中国が、今後どのようにこれを受け止めるかが鍵」と語った。

米国側はこれまで、固体燃料の使用技術は軍事目的へと容易に転用可能だという理由から、韓米ミサイル指針の改正に難色を示してきた。だが昨年から本格化した韓米当局間協議の過程で「ほかの国とのバランスが取れておらず、民間用ロケットに限って制限を解くもの」という韓国政府の説得の論理に共感を示したといわれている。

2020/01/29 10:20/朝鮮日報日本語版
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