中国本土の新型コロナウイルスの感染者は8日朝までに3万4000人を超え、死者は722人に増えた。中国当局は、最初期に新型肺炎に警鐘を鳴らし、7日に死去した男性医師をいまさら英雄視するが、習近平政権の隠蔽体質こそ感染拡大を引き起こした元凶であることは疑いの余地がない。国際投資アナリストの大原浩氏は寄稿で、習政権が「惨劇の法則」に直面していると指摘、人民蜂起寸前の状況だとみる。

《中略》

 しかし、現在の中国の状況に最も近いのは、同じ共産主義独裁国家であったソ連邦崩壊であろう。80年のモスクワ五輪の9年後にベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊は11年後の91年だった。

 北京五輪が開催されたのは2008年のことであるから、ここ数年かなり注意してウオッチしていたのであるが、香港の区議会議員選挙や台湾総統選での民主派の勝利は、東欧諸国で自由を求める機運が高まったことと酷似しており、ベルリンの壁ならぬ「香港の壁」崩壊も近いのではないだろうか。

 東欧での民主化運動の高まりには、1986年のチェルノブイリ原発事故でソ連当局が情報隠蔽に終始し、人々の不安をあおったことが大きな影響を与えている。

 習政権も新型肺炎において、大本営発表ならぬ「共産党発表」を繰り返しており、さらには世界保健機関(WHO)が「中国の意向を忖度(そんたく)している」疑惑も浮上している。

 感染の状況は、中国政府の公式発表よりもはるかに深刻だと考えるべきだ。武漢に閉じ込められて恐怖の日々を送っている人々を含め、「生死の瀬戸際」に立たされた中国人民が「政権打倒」へ向かってパワーを結集すれば巨大な勢力になる。

 天安門事件は89年6月で、同年11月のベルリンの壁崩壊の直前に起きている。この時には、人民を戦車でひき殺すような強権的手法で乗り切ったが、現在は通信・インターネットがかなり発達しており、香港には外国人(籍)も多く居住しているので、何もできないまま時間だけが流れる。

 万が一、中国が崩壊した場合、日本経済への打撃を心配する読者も多いだろう。一時的な混乱が起こり、中国大陸で多店舗展開をしている小売業や中国べったりの商社などに大きな打撃を与える可能性はあるものの、世界のデフレの元凶である中国での生産・輸出が止まれば、長期的に世界はデフレから脱出する。特に工場・雇用を奪われていた日本など先進国の経済は好調さを取り戻す。

 日本の数分の一のエネルギー効率しかない中国から先進国に生産拠点が戻れば、化石燃料の使用も大きく減る。グレタ・トゥンベリさんに教えてあげたいものである。

 一方、韓国の輸出の対国内総生産(GDP)比は約40%で、せいぜい15%程度の日本よりはるかに高い。さらに、全体の4分の1強を占める最大の輸出先は中国だ。

 1月の貿易統計によると、韓国の輸出は前年同月比6・1%減で、14カ月連続で減少した。新型肺炎の影響が反映されるとさらに激減する可能性が高く、4月15日の総選挙まで文在寅(ムン・ジェイン)政権がもたないかもしれない。

 また、北朝鮮はかなり早い時期に中国人旅行者の入国を禁止した。国民の栄養状態が極度に悪く、医療サービスもほとんど受けられないため、一気に感染が広がる恐れがあるからだ。

 しかし、中国からの旅行者は出稼ぎに次ぐ大きな外貨収入源であるから経済的に手痛いダメージを受ける。さらに、中国への入出国を繰り返して国連の出稼ぎ労働規制をくぐり抜けるのも難しくなる。金正恩(キム・ジョンウン)氏の運命も風前の灯だ。

■大原浩

夕刊フジ
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2/10(月) 16:56配信