米国、THAADの性能改良・追加発射台に続き基地工事費の韓国負担も検討
韓国国防部「THAADアップグレードの説明は聞いたが、発射台は初耳」

 これまで冬眠状態にあった終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で米国が揺さぶりをかけてきた。米国が慶尚北道星州郡の基地に配備されているTHAADの改良を韓国政府に通告し、さらに米軍幹部が外交的にデリケートな「追加発射台設置」の可能性にも言及したのだ。これと関連して米国防総省は星州基地での工事費を4900万ドル(約54億円)と見積もり、その負担を韓国政府に求める方策を検討中であることも明らかにした。

 米国は「非核化を拒否する北朝鮮の核の脅威に備える」という大義名分を主張するが、韓国政府としては難しい状況だ。北朝鮮への個別観光など北朝鮮関連事業を足がかりに、韓国政府は硬直状態にある南北関係を前進させる構想の悪材料になるだけでなく、THAADに強く反発する中国を刺激しかねないからだ。難航が続いている防衛費分担金交渉にTHAAD問題まで重なり、韓米間の対立に発展する可能性を指摘する声も出ている。

 韓国国防部(省に相当)のチェ・ヒョンス報道官は14日の記者懇談会で、THAADをめぐる米国の動きについて「米国側からTHAADのアップグレード、性能を改良するとの説明を受けた」「ただしその内容を具体的に明かすことはできない」と述べた。これについて韓国軍のある関係者は「昨年11-12月に米国は韓国政府当局者に対し、THAADの性能改良事業に関する概括的な次元の話をした」と話した。

 一部では米国が韓国軍にTHAADの改良について説明する際、「追加の発射台搬入を通告した」と主張する声もある。事実であれば、中国が強く反発する事案だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権が2017年末に中国と約束した「3不合意」の2番目は「THAADの追加配備はしない」だからだ。ある韓国軍筋は「3不合意で言及された追加配備は、レーダーを含むTHAADのシステム全体に関することで、米国が構想しているのは発射台だけの追加配備なので3不合意とは衝突しない」としながらも「中国が難癖をつける余地はある」との懸念も示した。

 韓国政府は米国による「THAAD追加配備計画」について公式的には「初耳」としている。韓国国防部はこの日「米国側から追加配備について通告を受けたことはなく、米国も追加配備計画はないと考えている」と説明した。星州のTHAAD発射台を首都圏に移動させる可能性についても「配備の部分について議論するとか、THAAD発射台が星州以外のどこかに行くという話がでたわけではない」ともコメントした。

 しかし韓国軍とその周辺では、「韓国政府の意志とは関係なく、米国による『THAAD攻勢』は今後さらに強まるだろう」との見方もある。米国は来年度の国防予算に星州THAAD部隊関連の工事費を580億ウォン(約54億円)と計算し、これを韓国政府から支払われる防衛費分担金から使う方策を検討中と説明したが、これもこのような見方を後押ししている。上記の韓国軍関係者は「3年近く野戦(臨時)配備状態のTHAADを直ちに正式配備せよという側面がある」と指摘した。米国による「THAAD波状攻勢」をめぐって外交関係者の間では「防衛費分担金交渉で優位を占めようとする米国の交渉戦略」とする見方もある。

 問題は米国によるTHAAD圧力の意図が何であれ、文在寅政権の対北朝鮮政策とは食い違うという点だ。北朝鮮はTHAADそのものにも反発しているが、米国によるTHAAD圧力に伴う防衛費分担金が大幅に増額される状況も北朝鮮にとって全く望ましいものではない。

 韓東大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「THAAD配備や防衛費分担金交渉をめぐる圧力は、最終的に南北協力を待ち望む韓国政府の基本姿勢にも障害要因になる」と指摘する。韓国大統領府は4月の国会議員選挙を前に、3月末の韓米首脳会談開催を目指しているが、これも南北交流協力事業などの再開に向けた手順の一つとの見方がある。THAADと防衛費分担金問題が今後さらに大きくなれば、韓国政府による「対北朝鮮政策の青写真」が挫折するのは避けられない。

 米国によるTHAADと防衛費の圧力が反米感情を刺激しかねない点も変数だ。野党のある関係者は「南北協力が進展しなければ、今の政府は最終的に『米国のせい』とするフレームを持ち出すだろう」「THAADと防衛費問題を逆手に取り、『わが民族同士』という感情を刺激しながら北朝鮮関連事業をさらに推し進めるだろう」と予想した。

朝鮮日報
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