迫る韓国3回目の通貨危機で日本に擦り寄り?日韓通貨スワップの重要性にやっと気づいた

韓国経済は新型コロナウイルスによる感染者急増で窮地に立たされている。こうした事態において誰でも想像するのは、韓国「3回目」の通貨危機襲来リスクである。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。


●3回目の「通貨危機」襲来か

韓国は、新型コロナウイルスによる感染者急増で、内需が落込み窮地に立たされている。

WHO(世界保健機関)から「パンデミック」宣言が出されるに及んで、輸出依存度の高い韓国にとって、さらに大きな痛手である。韓国経済は、内外需の両面で圧力を受けることになった。

こうした事態において誰でも想像するのは、韓国の「3回目」の通貨危機襲来リスクである。

1997年11月の通貨危機、2008年9月のリーマン・ショックによる金融危機を経験させられたからだ。いずれも、韓国ウォン相場の暴落に端を発する混乱であった。

ウォンは、1ドル=1,200ウォンが「マジノ線」とされている。1,200ウォンを割って下落に転じると歯止めが効かず、軽く1,500ウォン程度まで暴落して最悪事態に追い込まれるのだ。

●株式は6ヶ月空売り禁止

3月に入って、世界的な株価暴落で韓国株式市場もこれに飲み込まれた。

3月13日、窮余の一策として、株式市場で6ヶ月間の「空売り禁止」が発表された。

外国人投資家が、株式売却で得た資金を海外送金すれば、ウォン安を招くという道筋を遮断するものだ。韓国当局は、口には出さないがすでに「3回目の通貨危機」を回避する動きに出てきた。

為替投機筋が、ウォンを狙って売り崩すリスクは過去最大へと膨らんでいる。

● 2大要因で韓国経済は過去最大の危機へ

第1は、経済政策を取り仕切れるリーダーが不在である。

文政権は、まさに「極楽トンボ」と言える集団である。労組と市民団体が支持する政権で、この関係者以外は政権運営にタッチさせない「権力独占体制」を築いている。権力というおいしいパイは、関係者だけで分け合うスタイルである。この中には、経済専門家が一人もいないのだ。

文政権がこれまで行なった経済政策は、最低賃金の大幅引き上げと週52時間労働制である。

この理念は立派であり、誰も反対できるものでない。ただ、性急な実行は摩擦を伴うので、十分な準備時間を必要とする。スポーツでも必ず予備体操をするものだ。文政権は、その予備体操しないで、「ぶっつけ本番」で競技に入ったのである。韓国経済が混乱して当然である。

文政権は、理念さへ立派であればそれですべて良し、とする理念先行政治である。経済政策では、理念が良くても手段を誤れば逆効果になる。医療でも過剰投薬は副作用を伴う。そういう「臨床」的配慮がゼロなのだ。これが、偽らざる文政権の実態である。

第2は、理念先行が外交政策でも顕著である。文政権は、進歩派特有の社会主義志向である。資本主義を悪と位置づけ、「反企業主義」を時代の先端を行く政策と判断している。これが、労組と市民団体を支持基盤に吸い寄せた理由だ。

文政権の外交基本路線は、「親中朝:反日米」である。これが、韓国外交を歪な形にしている。中国と北朝鮮に対しては、何を言われても「ご無理ごもっとも」であるが、日米に対しては些細なことでも「一言」してくる。とりわけ、日本には「積年の恨みを晴らす」という仇討ち精神で対抗している。

文政権になって、日韓関係がすべて崩れ去った要因は、仇討ち精神による「過去回帰」である。未来志向は、消え去った状態である。
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