韓国は、別名をサムスン共和国とさえいわれる。

 サムスン電子は韓国を代表するグローバル企業で、時価総額は韓国内では圧倒的な1位(3月26日現在、290兆1314億ウォン)。2位のSKハイニックス(同61兆3706億ウォン)とは4倍以上の開きがある。

 新型コロナウイルスにより世界の株価指数は暴落を重ねているなか、今年1月頃から韓国では若者から専業主婦、退職世代に至るまでサムスン電子の株を買うブームが起きている。

(中略)

 今回の新型コロナウイルスによる急激な株価暴落局面で、「再び大きなチャンスが巡ってきた」と、韓国の個人投資家たちは考えた。

 サムスン電子に自分の持ち得る限りの力を振り絞って投資するという現象が生まれている。

 1月20日に韓国で初めて新型コロナウイルスへの感染が確認されてから、個人投資家たちは、1月24日までの5日間に、サムスン電子の株を6兆9623億ウォン分買い越した。

 一方、海外の投資家は反対の行動に出た。サムスン電子株を6兆9773億ウォン売り越したのだ。サムスン電子に対する個人と外国人の考え方が真逆に動いたといえる。

 こうした個人投資家と外国人投資家が対峙している状況を捉えて新しい造語もできた。

 いわく「東学アリ運動」という。

 今から136年前の1884年、反封建・反侵略を掲げて農民が蜂起。このときの社会改革運動は「東学農民運動」と呼ばれる。

 これにちなんでつけられた名前で、アリとは個人投資家のこと。

 韓国では、株に投資する個人を非力だが数が多いという意味で俗に「アリ」と呼んでいる。小さなアリが外国勢力に立ち向かっている様子から名づけられた。

 韓国のSNS上では、「2021年のサムスン電子株主総会は光化門広場で開かれる」というような書き込みが目立つ。

「その心は、韓国のほとんどの人たちがサムスン電子の株主だから」だという。

 サムスン電子株は昨年末1株当たり6万ウォン(約6000円)という最高値をつけたが、現在は4万ウォン台にまで落ち込んでいる。

 ところが、4万ウォン台以下には下がらない。どうもアリたちが買い支えている効果が現れているようなのだ。

 また面白いのは、これまで株投資をやったことがなかった人たちがサムスン電子株を買いに走っているのだが、彼らはサムスン株は系列の証券会社であるサムスン証券を通じてしか買えないと思っているらしい。

 投資家預託金は3月25日基準で41兆ウォンに近い歴代最大値を記録した。その大多数がサムスン証券に集中しているという。

 サムスン証券によると、スマホで加入する非対面口座は爆発的に増え、3月26日までの1か月間で10万人以上の加入者が増えたそうだ。

 スマホ加入の非対面口座だけでなく、証券会社に直接出向いて口座を開設する人も増えているという。こちらは主に高齢者だという。

 つまり、韓国の老若男女がサムスン電子の株を買い漁っているということである。

 いったいどこから株に投資するお金が出てきたのか。

 もちろん、富裕層など現金を確保していた人たちもいただろうが、株取引に新規参入した人たちの多くはどうも信用取引に走っているらしい。

 つまり、株価の上昇を見込んで借金し、その資金を株投資に回しているわけだ。

 実際、金融投資協会によると、3月11日に個人投資家たちの信用取引融資残高が、10兆1345億ウォンを記録したそうだ。

以下略
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59916

2020.3.27(金)
アン・ヨンヒ