大変な1カ月だった。もちろん私だけのことではない。新型コロナウイルス感染症のため多くの人々が日常生活を失った。ところが韓国と日本を行き来しながら生活する私の場合、新型コロナだけでなく日韓間の政治的な対立に巻き込まれた感じだ。

3月5日に日本政府は韓国と中国に対する入国制限措置を発表した。その一つが入国後2週間の隔離措置だ。国籍は関係ないというので私も当然その対象者となった。ただ、3月9日からこの措置が施行されたため、2日前に日本行きチケットを予約していた私はぎりぎり隔離を避けることができると考えた。

夫が東京で勤務している関係で私は毎月、日韓間を行き来している。3月にも確定申告などいくつかの用事もあり、1週間ほど東京で過ごす予定だった。

ところが日本政府が入国制限を発表した翌日の先月6日、韓国政府も対抗措置を発表した。日本人に対するビザ免除中止、すでに発行されたビザ効力の停止。日本政府が韓国人に取った措置をほぼそのまま韓国政府が日本人に適用したのだ。

私はすでに発行されたビザで韓国に滞在している日本人だ。まさか3月9日以降に韓国に滞在すれば不法滞在者になるのではと考えた。ところがその時点に日本に行ってしまえば、韓国に戻ってくることができないのではと不安になった。ニュースを注意深くチェックしたが、「すでに発行されたビザ効力の停止」という言葉を繰り返すだけで、その詳細内容は分からなかった。

3月7日の飛行機は午後の出発便だった。行くべきかやめるべきかを悩んで在韓日本大使館に電話をかけてみた。土曜日だったため緊急電話につながった。疑問点を尋ねたところ「外国人登録証があれば不法滞在者になることはない。再入国の許可を受けて出て行けばビザ期限内には韓国に戻ってくることができる」という言葉を聞いた。それでも心配で日本外務省の職員の友人に個人的に尋ねると「私の解釈では出て行けば再入国は難しいかもしれない。取りあえず韓国にいるのがよい」という助言があった。日本政府はこの措置が3月末まで施行されると発表し、韓国政府は時期に言及しなかったのをみると、日本が撤回するまで続くと予想することができた。このため3月はひとまず韓国に残ることにした。その後、韓国法務部に電話をした結果、外国人登録証がある日本人はビザ期限内には日本に行ってくることができ、再入国許可の手続きは必要ないということが確認された。

日本は木曜日の3月5日に、韓国は金曜日の3月6日に発表し、週末を挟んで9日から制限措置を施行したため、私の周囲の韓国に住む日本人、または日本に住む韓国人は大混乱した。不法滞在者になると考え、急いでチケットを購入して出国した人も少なくなかった。

果たして「既に発行されたビザの効力停止」は防疫に役に立つのだろうか。ひとまず移動を減らすのが防疫のためになるのではないのか。私が納得できないと言うと、韓国の知人らは「それでも安倍晋三首相が先に発表したので仕方がない」という。私もそれ以上は話す言葉がなかった。

これまで日本で新型コロナ感染者数が少なかったのは検査を十分にしていなかったからだ。実際、フィリピンを訪問した後に風邪の症状が続いていた夫に検査を受けるよう進めたが、「病院に行ったが検査はできなと言われた」と言ってそのまま仕事を続けていた。SNSなどでも検査を受けられなかったという事例を何度も目にしながら、オリンピック(五輪)のために検査をせず感染者数を抑えているのではと感じた。予想通り五輪の延期が決定すると、日本では感染者が急激に増えている。今は韓国の方が安全な状況であるようだ。

一方、韓国では3月9日から「マスク5部制」が施行された。平日には購入できず、週末に外国人登録証を持って薬局に並んだ。ところが外国人は健康保険に加入していなければ購入できないという。私は日本で健康保険に加入していて、毎月日本に行くため、韓国で病院に行くことはほとんどない。やむを得ず行くことになれば高い医療費を支払う。マスクも高く支払ってでも購入できるべきはないだろうか。それより外国人がマスクを買えなければ、危険なのは外国人本人だけでなく韓国人でもある。SNSでマスクを買えなかったことを伝えると、数人の友人から「マスクを送る」という連絡があった。政府は冷たくても人は温かいと感じたことは一度や二度でない。私が韓国を離れない理由の一つだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200411-00000006-cnippou-kr
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中央日報