米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国でつくる機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」への日本参加論や連携拡大を求める声が、日英両国であがっている。

 自由と民主主義、人権などの価値観を共有する日本と5カ国が情報(インテリジェンス)分野などで、全体主義の中国の脅威に協同で対処する狙いがある。

 スパイ防止法や対外情報機関を持たない日本がすぐにフルメンバーになることは難しい。だが、これらインテリジェンス機能の整備を進め、将来的にはフルメンバーになることも視野に、今から協力を深めていきたい。

 英与党保守党のトゥゲンハート下院外交委員長は7月、中国問題の研究会で「日本を入れてシックスアイズにしたい」と語った。オンライン出席していた河野太郎防衛相はこれを歓迎したという。

 河野防衛相は8月4日の記者会見で日本は5カ国と外交、防衛上の情報交換をすでに行っているとし、「これからも緊密に意思疎通を図っていきたい」と語った。

 英労働党のブレア元首相は産経新聞のインタビューで、中国問題を理由に日本の参加を「検討すべきだ」と語った。

 5カ国は東西冷戦期から衛星などによる世界的な通信傍受網を運用し安全保障に活用している。

 世界で何が起こっているか。中国や北朝鮮、ロシアなどがひそかにどのように動いているか。機密情報を共有し、外交安全保障、経済政策に生かせば日本の平和と安全に大きく寄与するだろう。

 5カ国側は中露、北朝鮮への自衛隊の通信傍受能力を評価し、経済分野も含め日本が持つ中国情報に期待している。

 日本は同盟国として、ファイブアイズ筆頭の米国とは情報を共有する間柄だが、インテリジェンス能力の高い英国、インド太平洋の要であるオーストラリアなどと連携を広げる意義も大きい。

 過去には日米自動車交渉で、橋本龍太郎通産相の通話を米国が盗聴した疑惑があった。ファイブアイズと極めて密接な関係を築けば、政府中枢などへの盗聴を繰り返させないことも期待できる。

 5カ国の行動は、香港問題での共同声明など外交や医療・レアアースの戦略物資共有まで広がっている。日本も連携して中国の拡張主義を抑えていきたい。

産経新聞 2020.8.22 05:00
https://www.sankei.com/column/news/200822/clm2008220004-n1.html