敵基地攻撃能力の保有の検討は、安倍晋三首相の主導で期限を区切って進められている。

 首相が安保戦略について「この夏、国家安全保障会議(NSC)で徹底的に議論し、新しい方向性を打ち出す」と表明したのは6月18日の記者会見。河野太郎防衛相が地上イージスの配備撤回を発表した3日後だった。

 河野氏は方向性を2021年度予算案に反映させるのに「(9月末が締め切りの)概算要求は一つの節目になる」と言及。当初から検討期間を約3カ月に区切ったことになる。

 これに間に合わせる形で、自民党の検討チームが6月末に発足し、約1カ月で提言をまとめた。議論に参加した岩屋毅前防衛相は「非常に急いだ作業。もう少し時間がほしかった」と明かす。この間、国会は閉会中で、安保政策に関する審議は衆参両院で7月に一度ずつ開かれただけ。保有に慎重な与党の公明党との調整も行われていない。

 安倍政権は、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更といった安全保障政策の転換を、国民の根強い反対を押し切る形で進めてきた。地上イージスはトランプ米大統領に購入を促され、導入を閣議決定した。今回も丁寧な説明や議論が不足している印象は否めない。自民党の防衛相経験者は「この短期間で政府が敵基地攻撃まで踏み込むのは無理だ」と指摘している。(井上峻輔)

東京新聞 2020年8月27日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/51292?rct=politics

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