「主権国家」から転落した中国の末路

◆中国を許さないトランプ政権

米大統領選でドナルド・トランプ大統領の再選を目指す選対本部が8月23日、2期目の政権公約を発表した。私が注目したのは、新型コロナウイルスの感染拡大について「中国に責任をとらせる」方針を明確にした点だ。中国はどう対抗するのか。

トランプ氏の選対本部が発表した政権公約は、雇用やコロナ対策、対中関係、社会保障、教育、行政改革、警察強化、移民問題、技術革新、外交政策の10項目から成っている(https://www.donaldjtrump.com/media/trump-campaign-announces-president-trumps-2nd-term-agenda-fighting-for-you/)。中国については、次の5項目を列挙した。

・中国から製造業で100万人分の雇用を取り戻す

・中国から雇用を(米国に)戻す企業には減税をする

・とくに医薬品やロボットなどの重要産業については、100%の費用控除を認める

・連邦政府は中国に仕事を発注している企業と取引しない

・中国には世界中にウイルスを拡散させた責任をとらせる

5番目の責任問題を含めて、トランプ選対は27日(日本時間28日)に予定される共和党大会での指名受諾演説と、その後の選挙キャンペーンで「公約の詳細を明らかにする」という。したがって、現時点で具体的な中身は明らかになっていない。

トランプ政権は、中国にどう責任をとらせるつもりなのか。

◆アメリカが中国を訴える!

5月1日付の米ワシントン・ポストは中国に対する賠償請求について、複数の政府高官の話として、いくつかの選択肢を示した(https://www.washingtonpost.com/business/2020/04/30/trump-china-coronavirus-retaliation/)。それによれば、まず中国が保有している米国債の利払いを停止する案が浮上している。

中国は2020年6月時点で、1兆744億ドル(約114兆円)の米国債を保有している。米国の国際緊急経済権限法(IEEPA)は、緊急事態に際して、外国が保有している資産の没収や外国為替取引などを停止する権限を大統領に与えている。

いざとなれば、トランプ政権は中国保有の米国債を元本ごとチャラにするのも可能だが、まずは、一部の利払い停止から始める案を検討しているようだ。ただ、この案について記者団に問われた大統領は「米ドルに対する信認を傷つける」と語り、消極的な姿勢を見せた。

記事によれば、代わりにトランプ氏は「中国からの輸入品に、たとえば1兆ドルといった巨額関税を課す」案に言及した。大統領は「それだけでなく、他にもっと簡単な方法がいくつもある」とも語り、多くの選択肢があることを示唆している。

その1つは、中国政府や高官が米国に保有している資産を没収し、賠償に当てる案だ。これはジョシュ・ホーリー上院議員(共和党)やトム・コットン上院議員(同)らが7月20日、「COVID犠牲者に対する市民正義法」としてまとめ、上院に提出した(https://www.hawley.senate.gov/senator-hawley-colleagues-release-plan-hold-chinese-communist-party-responsible-coronavirus)。

中国政府や高官が、米国はじめ英国、カナダ、オーストラリアなど西側各国に巨額資産を保有しているのは、よく知られている。総額は1兆ドルとも4兆ドルとも言われるが、米国当局は相当部分を把握しているだろう。

米英など「ファイブ・アイズ」と呼ばれる5カ国は、情報機関同士が協定を結んで、中国に関する機密情報を交換しているから、その気になれば、各国が一網打尽で資産を根こそぎ没収してしまうのも、まったく不可能ではない、と思われる。

(続く)

長谷川 幸洋 08/28
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75182