文在寅(ムン・ジェイン)政権が成し遂げた「一度も経験したことのない国」は一度も経験できなかった「ニュー・ノーマル」を確立した。法の上に「陣営」が君臨するということだ。「こちら側の人間、味方」という理由で違法行為をかばい、犯罪を見逃すことが日常茶飯事となった。政権保衛の忠犬として活躍してきた法務長官の場合、息子の兵営脱走を巡る具体的な証言が相次いでいるにもかかわらず、検察は9カ月にわたって手をこまねいている。蔚山選挙介入事件の核心である当時の大統領府秘書室長と国政状況室長らは、これといった調査も受けないまま起訴から除外された。慰安婦被害者を売り込むことで利益を手にしたという市民団体上がりの与党議員を巡る事件は、捜査が進められているのかどうかさえも、なしのつぶてだ。

 違法行為を捜査する検察や警察はもたついては前に進めず、たとえ起訴されても裁判所が考えもよらない論理で無罪放免とする。与党所属の京畿道知事が明らかに虚偽と分かる内容を流布したにもかかわらず、最高裁判所は「(うそを)積極的についていない」という前代未聞の法理を適用し、免罪符を与えた。政権の支持勢力である全教組(全国教職員労働組合)が労働組合法の条項を真っ向から破ったにもかかわらず、裁判所は訳の分からない理由を並べ立てて合法判定を下した。ありとあらゆる手段を行使して強行した文政権の司法部掌握工作が功を奏している。「有銭無罪」ではなく、「親文無罪」がニュー・ノーマルな世の中となったのだ。

 もはや国民は、この政権の偽善的な本質についてしっかりと理解している。統合を口にしてはあちらこちらで敵味方を分けるなど、自分の味方をかばうことにかけてはどこよりも「優れた」政権だった。不通と独善、力で推し進める国政の独走は、軍事独裁に引けを取らなかった。民主化勢力の末裔(まつえい)としながら民主主義を揺さぶり、脱権威を掲げながら誰よりも権威主義的な行動を見せた。検察を手なずけ、裁判所を掌握し、大統領府警護隊といった名前がお似合いの高位公職者犯罪捜査処(公捜処)を設立し、三権分立の憲法原則を無力化した。

 弱者の味方と言いながら弱者を苦しめる政策を推し進めたのも現政権だ。低所得者層の働き口を奪い、貧しい人をさらに貧しくさせ、家のない青年・庶民を永遠の無住宅者へと転落させた。

「みんなが竜になる必要はない」として全国民を「カブンゲ(韓国語のザリガニ、フナ、カエルの頭文字)」の養殖場に閉じ込めた。これほどまでに庶民の希望のはしごをなぎ倒しておきながら、自分たちは反則と便法をためらわず、あらゆる権力をほしいままとした。

 彼らがこれほどまでに「ずうずうしく」専横できるのは、信じるところがあるからだ。文政権はここ3年間、積弊の狂風を巻き起こし、国家権力を隅々に至るまで味方に付けた。大統領府を頂点に、政府・与党と官の側に付くメディア、御用達の知識人と親文紅衛兵で構成された「左派カルテル」の構築に成功した。彼らだけのカルテルが世論を掌握し、うそまでも事実としてつくり上げている。左派知識人たちが無理な論理を展開し、親政府メディアは追従報道する。「テケムン(頭が割れても文在寅の意、盲目的な文大統領支持派のこと)」は書き込みと検索順位を操作し、一部の世論調査会社が「加工された世論」を供給。うそを拡大再生産している。愚民化システムを組織化したのだ。

 国民を欺く真実捏造(ねつぞう)のカルテルは、左派統治の基盤となっている。文政権が安心して国政暴走に突き進むのも、世論を操作できるといった自信のためだ。いかなる場合でも「40%の支持率」は堅固に守ることができるというわけだ。大量失業が起きても、不動産大乱が起きても、甚だしくは「チョ・グク・スキャンダル」が発生しても、40%台を割り込むことはなかった。これほど多くの失政を犯しても「20年政権」うんぬんできる与党の自信は、こうしたことに基づいている。40%さえ味方に付ければ、政権継続はいくらでもできるというわけだ。

(続く)

朴正薫(パク・チョンフン)論説室長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2020/09/20 08:00
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