北朝鮮で「間違いは犯さない」絶対的存在の最高指導者が謝罪するという極めて異例のことが起きた。北朝鮮軍兵士が韓国人を射殺して遺体を燃やしたとされる事件。謝罪の背景には何があるのか。実妹の金与正党第1副部長が2ヶ月以上公の席に出てこなかった事情とも関係がありそうだ。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は9月25日、「我が方の水域で思わぬ不始末な出来事が発生し、文在寅大統領と南側の同胞に大きな失望感を与えたことを非常に申し訳なく思う」と謝罪した。

事件は、金正恩氏の謝罪の前日に公になった。韓国国防省は9月24日、朝鮮半島西側の黄海で、違法操業の取り締まり中に行方不明になっていた漁船指導船の乗組員が北朝鮮の軍当局者に射殺されていた、と発表した。北朝鮮当局が男性の遺体に火をつけたという。文在寅大統領は同日、「いかなる理由でも容認できない」とし、北朝鮮に責任ある説明と措置を求めていた。

また、韓国側は文大統領と金委員長が9月、親書を交換していた事実も公表した。文氏が9日、北朝鮮を襲った水害を見舞う親書を送った。

これに対し、金正恩氏は12日、「久しぶりに私に届いた大統領の親書を読みながら、文書にあふれる心からの慰労に深い同胞愛を感じた。大統領が重い責務のため健康を保つことを忘れるのではないかと心配だ」といった内容だったという。

北朝鮮の最高指導者が謝罪した例は過去、金日成主席が「遺憾の意」を示した1976年のポプラ事件や、金正日総書記が2002年9月の日朝首脳会談で、日本人拉致を認めて謝罪した例くらいしかない。

ポプラ事件では、北朝鮮兵が米軍将兵を殺害したことで米朝関係が極度に緊張した。金主席の謝罪は、米軍による攻撃を避ける狙いがあった。金総書記の謝罪は、日本から巨額の経済支援を得るためのものだった。金正恩氏の謝罪には、厳しい国内事情と北朝鮮自身の対外戦略が影響しているようだ。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/ca5f3853fe43d78e5f67d4eb9fe4e333d70b3eb0

写真 笑顔のムン・ジェインとキム・ジョンウン
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