中韓通貨スワップを増額、日韓通貨スワップは不要と主張する韓国政府
宗主国と属国の関係が鮮明に
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 10月22日、韓国銀行と中国人民銀行は、通貨スワップを延長する契約を交わした。中韓通貨スワップは、在韓米軍のTHAAD配備に中国が反発した2017年10月に途切れた後、従前通りの条件で3年間延長、今回、上限を従来の3600億元から4000億元に増額し、期限も5年に伸長した。

◆悪化した日韓関係、通貨スワップの終わりについて報じる
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 翌23日には、習近平中国国家主席が朝鮮戦争参戦70周年行事で中国指導者として20年ぶりの演説を行ったが、韓国には一切言及せず。

一方、習近平国家主席の訪韓を待ち望む文在寅政権は沈黙している。

 韓国と中国はリーマンショック直後の2009年4月にはじめて通貨スワップを締結した。当初の上限は1800億元で、2011年に3600億元まで拡大した。

 通貨スワップは、当事国の一方が通貨危機に見舞われたとき、自国通貨を預けて相手国通貨を借りる双方向の取り決めだ。

 もっとも、韓国ウォンの信用度を高め、韓国の通貨危機がアジアに波及する事態を防ぐ要素が強かった。

 事実、韓国は08年10月に米国と通貨スワップを締結し、12月に日本と韓国の円・ウォン通貨スワップを200億ドル相当まで増額した後、スワップを活用してリーマンショックから立ち直っている。

 中韓通貨スワップは、韓国が米国と締結している最大600億ドルに次ぐ規模となったが、米韓通貨スワップは新型コロナ対策の時限措置であり、事実上は唯一の大きな取り決めいってよいだろう。

 韓国の財界は15年2月に終了した日韓通貨スワップの再開を求め、日本も韓国政府が切望すれば検討してもよいという立場だが、韓国政府は中国とのスワップがあるから日韓通貨スワップはなくても良いと主張している。

◆米国と対抗して朝鮮半島を助けたという中国
今年4月の選挙で「民族のアイデンティティを問う」と作られた投票推進ポスター
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 中韓通貨スワップは上述の通り、韓国の外貨が不足したとき、韓国ウォンを担保に中国が人民元を貸し出す取り決めである。

 貿易取引は輸出国通貨か米ドル決済が一般的で、基軸通貨の米ドルや日本円などを調達できれば、必要な通貨との交換も可能だ。

 しかし、いざというとき、韓国最大の貿易赤字国である日本や2位のサウジアラビアなどは、韓国ウォンはもちろん中国元も受け取らない。

 中国企業を守るくらいしか効果はないが、最大4000億人民元の通貨スワップは香港と並ぶ最恵国水準であり、経済に疎い文政権は、属国並み待遇を与えてくれた宗主国に感謝していることだろう。

 宗主国は「抗米援朝記念日」にも属国に含む発言を行った。

 日本で先の戦争といえば第2次世界大戦を指すが、韓国は朝鮮戦争を指して、「6・25戦争」と呼んでおり、中国は参戦した10月25日を「抗米援朝記念日」に指定している。

 朝鮮戦争は1950年6月25日、北朝鮮軍が南侵して幕を開けた。

 当時、北朝鮮の軍事力は韓国を上回っていたが、米国が国連軍を率いて参戦すると、金日成は旧ソ連に支援を要請し、スターリンは中国の参戦を提案した。

 旧ソ連は国連常任理事国として拒否権を持っていたが、国連軍の編成と派兵の是非を問う国連会議を欠席し、参戦もしなかった。

 共産主義の覇者を目指したスターリンには、米国と中国を朝鮮半島に足止めし、欧州の共産主義を強化したい思惑があったのだ。

 一方、中華民国を台湾に追い出して間もない毛沢東にとって、朝鮮戦争は新生「中華人民共和国」の存在感を高める機会となり、第2次大戦時に米ソから支給された武器と旧日本軍が残した武器を持って、50年10月25日に参戦した。

 米軍主体の国連軍には歯が立たない中国は、韓国軍にターゲットを絞り、14万人近い韓国人兵士が戦死した。

 アイゼンハワーが米大統領に就任し、スターリンが死去した53年、中朝軍と国連軍は休戦協定を締結した。

(続く)

デイリー新潮 11/1(日) 8:01
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