民団中央本部人権擁護委員会(李根嶋マ員長)は4日、東京港区の韓国中央会館で在日韓国人法曹フォーラム(李宇海会長)と共催で、「第2回人権セミナー」を開催した。昨年に続き、関東大震災の朝鮮人大虐殺とヘイトスピーチをテーマに、歴史修正主義を検証した。昨年の第1回は200人規模だったが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、定員を60人程度に設定したが、民団や日本の市民運動関係者ら80人余りが参加した。

開会を前に、中学生時代に2009年に荒川土手に建立した「関東大震災時韓国・朝鮮人殉難者追悼之碑」のある土手の前を通っていたという在日3世歌手の李政美さんが「セノヤ」「鳳仙花」「京成線」の3曲を独唱する鎮魂ライブが行われた。

開会式で、民団中央の呂健二団長は「3年後は関東大震災から100年を迎える。その時にはぜひとも日本政府側から何らかの追悼メッセージが出されることを望みたい」と述べた。

李会長は「虐殺否定論に対し、被害者の末裔でもある私達が黙視してはならない。在日同胞と日本市民が人知を合わせていく場にしたい」と呼びかけた。

セミナーはジャーナリストやノンフィクション作家、市民団体、民団など4人が意見発表した。

「トリック『朝鮮人虐殺』をなかったことにしたい人たち」の著者でノンフィクション作家の加藤直樹さんは、「朝鮮人犠牲者追悼式典をめぐる2020年の攻防」と題して講演。

小池都知事の3年連続追悼文見送りや、朝鮮人虐殺を疑問視する団体「日本女性の会 そよ風」が昨年9月に東京都内の横網公園内で開いた集会での発言が「ヘイトスピーチ」と認定された点、今年9月の追悼集会に対する「誓約書」要請が若手から中堅の弁護士の反発によって事実上撤回されたことなどを取り上げ、2009年の工藤美代子、2014年の加藤康夫夫妻による虐殺否定論を記述した著書など、ここ数年、台頭している「虐殺否定論」の経緯と小池都知事の歴史認識など背景を解説しながら、史実を消し去ろうする企みを許してはならないと警鐘を鳴らした。

『ヘイトスピーチ』『ルポ差別と貧困の外国人労働者』などの著者でジャーナリストの安田浩一さんは「何が(誰が)日本社会のヘイトを加速させたのか」と題し、新聞記者時代から取材・調査してきた差別の現場とその質の変化を説明し、ヘイトを「育てる」ネット言論、SNS、大手メディア、常態化する「嫌韓報道」にあわせて各地にある「朝鮮人慰霊碑」の撤去や碑文の修正など、排外主義集団に歴史の書き換えについてを指摘しながら、「これら差別と偏見を煽っているのは、社会、メディア、国であり、日本の国家と言っても過言ではない」と力説した。

川崎市の「ふれあい館」への脅迫のハガキへの実刑判決などの例を罰則規定「差別のない社会にむけて何を闘うのか、誰が闘うのか、何のために闘うのかをしっかり意識しながら、今、私にできることはを考えながら訴えて続けていきたい。そして皆さんの知恵を借りながら力を合わせていきたい」と呼びかけた。

続いて、「関東大震災に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」と「グループほうせんか」の慎民子さんは、会の歩み、2009年に荒川土手に建立した「追悼碑」とミニ資料館「ほうせんかの家」にまつわる約30年間のエピソードを語った。

最後は民団中央本部の徐元侮末ア総長が「潜在し続けるもの」と題して、関東大震災の朝鮮人虐殺と2012年以後のヘイトデモなどの心理的虐殺や1923年の自警団と現在の「自警団」への拡散、今に至る「征韓論」などを解説した。

この後、参加者からの質問書に応える形で行った意見交換に続いて、関東大震災犠牲者の冥福を祈り参加者全員が黙祷を捧げた。

閉会のあいさつで李委員長は「人権擁護委員会では歴史の事実を改ざんさせないためにも、このセミナーを続けていく」と強調した。


掲載日 : [2020-12-11 11:38:00]
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