29日午後2時頃、ソウル市松坡区のソウル東部拘置所において、1人の収容者が外から見える窓の鉄格子の間から白い紙を出した。その紙には「助けてください。疾病管理本部の指示。感染者8人が収容」と書かれていた。この収容者はマスクを着用せず、20分以上にわたり窓から紙を出したり入れたりしていた。収容者は「感染者は1つの部屋に8人ずつ収容。書信(手紙)を外部に出すことは禁止」と書かれた別の紙も示していた。

 ソウル東部拘置所のコロナ感染者は、前日までに確認されただけで769人(職員21人、収容者721人、出所者6人、職員の家族21人)に達した。収容者全体の30%が感染したことになる。単一の施設としては最多かつ最悪の感染拡大で、しかもこの施設は国が管理している。拘置所の特性上、内部の状況は外部に公開されないため、収容者らは鉄格子の間から「助けてくれ」と訴えていた。この日午後、東部拘置所前で出会ったある中年女性は「拘置所にいる息子に薬を届けに来た。感染したという連絡はまだ受けていないが、互いの状況についてやりとりできないので、心配で頭がおかしくなりそうだ」と述べた。高麗大学医学部予防医学科のチェ・ジェウク教授は「収容者である前に国民だ。これが文明国のやることか」と苦言を呈した。東国大学法学部のキム・サンギョム教授は「政府の野蛮な人権意識が赤裸々にあらわれた」と指摘した。

この日、東部拘置所の収容者からコロナによる最初の死者が出たこともわかった。グッドモーニング・シティ事件の主犯だったユン・チャンヨル氏(66)は感染確認後、病院に移送され治療を受けていたが、今月27日に死亡した。韓国法務部(省に相当)が明らかにした。東部拘置所では感染の更なる拡大の懸念も広がっている。23日に東部拘置所で陰性の判定を受け、ソウル南部教導所(刑務所)に移送された85人のうち、16人の感染が確認された。江原北部教導所に移送された1人も感染が確認された。感染者らは同時に移送された収容者らと1つの部屋で生活していたが、感染が確認されてから独房に隔離されたという。そのため今後新たな感染者が出てくる可能性も排除できない状況だ。

 丁世均(チョン・セギュン)首相はこの日午前、中央災難安全対策本部での会議で「政府が直接管理する矯正施設において、大規模な集団感染が発生したことは申し訳ない」と謝罪した。東部拘置所でコロナの感染が確認された後も、1カ月以上にわたり公にコメントを出さなかった秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官はこの日午後2時頃、はじめて拘置所を訪れ、現状を確認した。

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