インド太平洋では今年、欧州主要国による艦船派遣が相次ぐ。欧州連合(EU)によるインド太平洋戦略の策定を目指す動きも出てきた。中国が新型コロナウイルス禍でも軍拡を進め、威圧を強めていることへの危機感が背景にある。

 ドイツ国防省は今月初め、今年8月から来年2月にかけて、フリゲート艦「バイエルン」をインド太平洋に送ると発表した。マラッカ海峡を経て南シナ海を航行する計画で、「法の秩序維持、航行の自由、多国間主義」を示すのが狙いだとしている。昨年9月にインド太平洋戦略のガイドラインを発表した後、初の艦船派遣となる。

 フランスのフリゲート艦「プレリアル」は2月、佐世保に寄港。日本の海上自衛隊や米海軍と九州沖で共同訓練に参加した。その後、東シナ海に展開し、北朝鮮船舶が別の船に横付けして物資を積み替える「瀬取り」の監視を行った。仏国防省は2月、攻撃型原子力潜水艦「エムロード」が南シナ海をパトロール航行したことも明らかにした。

 原潜派遣の発表は、極めて異例。中国による海底の資源探査、ケーブル敷設などの現状変更を監視する狙いとみられる。フランスは太平洋にニューカレドニアなど海外領土を保有し、2018年、ほかの欧州諸国に先駆けてインド太平洋戦略を発表した。現在は独仏のほか、オランダがインド太平洋戦略を策定している。

 EUのボレル外交安保上級代表は12日、「インド太平洋へのEUの戦略的取り組みが必要」と主張した。中国による香港国家安全維持法の施行、台湾への軍事威嚇で、欧州では法の支配が脅かされているという危機感が強まっている。

 フランスのパルリ国防相は先月の仏紙との会見で、来年、仏がEU議長国を務めるのに合わせ、EUのインド太平洋戦略策定を目指す意欲を示した。(パリ 三井美奈)

産経ニュース 2021.3.16 22:27
https://www.sankei.com/world/news/210316/wor2103160025-n1.html

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九州西方の海域で共同訓練する海上自衛隊の補給艦「はまな」(中央)、米駆逐艦「カーティス・ウィルバー」(左)、仏フリゲート艦「プレリアル」=2月19日(海上自衛隊提供)