大法院(最高裁)全員合議体は2018年10月、強制徴用被害者に対する賠償責任を認める判決を確定した。しかしそれ以降も日帝強制徴用被害者に対する下級審の判断が分かれ、被害者の法廷争いは霧の中に入った。

さらに賠償判決を履行しない日本企業の国内企業との取引代金が差し押さえられる決定も出てきた。これと似た事例がさらに出てくる可能性があり、国内企業の混乱も深まるという懸念が出ている。

法曹界によると、水原地裁安養(アンヤン)支部は18日、国内企業LSエムトロンが三菱重工業に支払う物品代金8億5000万ウォン(約7950万円)の差し押さえ・取り立て決定を出した。

三菱重工業は強制徴用被害者に対する賠償責任を果たしていなかった。これに対し被害者は三菱重工業の商標権・特許権差し押さえ申請を出すなどの対応をしてきた。今回の差し押さえで被害者が実質的に損害賠償を受ける道が開かれたという分析が出ている。

ところが、この過程で企業の混乱が生じた。まずLSエムトロンの取引対象が三菱重工業とは別の企業「三菱重工業エンジンシステム」であり、資産差し押さえ対象なのかという指摘が出ている。

また、三菱重工業や日本製鉄など日帝強占期の強制徴用動員企業と取引する国内企業を対象に似た事例がさらに出てくるという見方もある。日本企業と取引する国内企業のもう一つの「韓日関係リスク」が生じることもあるということだ。

強制徴用関連の判決も分かれている。ソウル中央地裁は11日、別の強制徴用被害者裁判で原告敗訴判決を出した。民法によると、損害賠償を請求する権利は被害者や法定代理人が損害または加害者を知った日から3年以内に行使しなければ消滅する。

パク・ソンイン部長判事は「原告の権利行使障害事由は2018年10月の大法院の確定判決ではなく、2012年5月の大法院の破棄差し戻し判決で解消したと見るべき」と判断した。

一方、これに先立ち光州(クァンジュ)高裁は大法院判決が確定した2018年10月を権利行使障害事由が解消した日と認めた。

6月には強制徴用被害者85人が日本製鉄、日産化学、三菱重工業など日本企業16社を相手に提起した1審訴訟で敗訴した。ソウル中央地裁は「個々人の被害者に訴訟を起こす権限はない」という理由で「却下」判決をした。被害者は反発して控訴した。

裁判所は常に同じ結論を出すとは限らない。しかし同じ法に対して正反対の結論を出すケースが続けば、強制徴用被害者だけでなく国内企業の混乱も深まる。誰もが尊重できる明確な基準が必要な時だ。


中央日報日本語版 2021.08.23 09:50
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