冷めやらぬキメツ熱
 2020年に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は海外でも45の国と地域で上映が行われ、昨年公開の映画として世界1位の興行収入となった。世界で約517億円超を稼ぎ出したその人気は、日本製品不買を謳う韓国でも別格で、関連コンサートが開かれるほどだという。羽田真代氏によるレポート。

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は日本製品不買運動下の韓国でも大ヒットし、今年5月には累計観客動員210万人を記録。「千と千尋の神隠し」を超え、韓国では「君の名は(367万人)」「ハウルの動く城(301万人)」に続き歴代3位を記録した。

 映画の公開が終了しても韓国内での“キメツ熱”は冷めておらず、10月20日には「鬼滅の刃 兄妹の絆」の公開が決定した。その後も「鬼滅の刃 那田蜘蛛山編」「鬼滅の刃 柱合会議・蝶屋敷編」を封切り予定だという。

 映画のみならず、「鬼滅のシンフォニーオーケストラコンサート」が今月15日に開催され、11月にも同様のコンサートが開かれる。〈アニメのオープニング曲「紅蓮華」や挿入歌の「竈門炭治郎のうた」などをアニメの名場面とオーケストラの鮮やかな音楽で鑑賞できる〉内容で、これに〈電子ギターやベース、ドラムなどのバンドサウンドを加えることでさらに豊かで迫力ある演奏が披露〉されるという。

(略)

ここで旭日旗問題についてざっとおさらいしておこう。近年、韓国側が旭日旗に異議申し立てをする回数や度合いはエスカレートしてきた。

 ざっと挙げておくと、2017年に発売されたバーガーキングの「ズワイガニバーガーの包装紙」、2018年の反日教授の徐坰徳(ソ・ギョンドク)誠信女子大教授が指摘した「日本航空の機内食用容器のふた」、2019年に撮影された韓進グループの趙源泰(チョ・ウォンテ)会長のバックに写った「飛行機のジェットエンジン部」……。いずれも写真で確認いただけるように、言いがかりに近いか言いがかりそのものだ。

 また、7月の東京五輪の開会式では、「選手らの配置が旭日旗の放射線状だった」とクレームが入ったし、スポーツクライミングのボルダリング競技決勝で使用されたホールド(構造物)が旭日旗を模しているなどという指摘もあった。

 そういった旭日旗アレルギーをよそに、韓国の鬼滅ファンは、映画公開およびコンサート開催を非常に喜んでいる。SNSでは「見に行く人はいますか?」と呼びかけたり、「すごく楽しみだ」と投稿をあげたりしている人が少なくない。また、鬼滅グッズの転売投稿も変わらず盛んだ。

インターネットの掲示板には「日本は嫌いだけど、日本の文化を楽しむヘル朝鮮(様々な格差が拡大した韓国社会の生きづらさを表現したスラング)」「アニメは好きじゃなかったけど、友達に誘われて仕方なしに見ていたら本当に面白かった。次の映画も見たい」という意見がある一方で、「この時期にチョッパリ(日本人に対する差別用語)のアニメを紹介するなんて…」と否定的な意見もあり、両者は拮抗しているように映る。

かねて韓国では日本のアニメ人気はすこぶる高く、「日本のアニメに育った・育てられた」という世代はどんどん拡大している。鬼滅はその中でも超・横綱級のコンテンツである。それだけに、少なくとも韓国内だけでも旭日旗問題が修正されたのは、「NO JAPAN」「ボイコットジャパン」陣営にとっては溜飲が下がる出来事だったのは間違いない。

 このような反日勢力に遠慮して、大っぴらに鬼滅を楽しむことができなかった隠れファンたちが、強い鬼滅愛ゆえに“地下”から浮上してきてしまった。その結果、「反日不買下の日本コンテンツ推し」という奇妙でいびつな状況が生まれたということかもしれない。

全文はソースで
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/09210602/?all=1&;page=1