ひと昔前の中国と言えば「自転車の波」のイメージが浮かぶが、今は電動自転車の保有台数が3億台を超え、新たな国民の足となっている。しかしここ2年ほど電動自転車の火災が相次ぎ、今年はすでに1万件を突破。死者も出ていて社会問題となっている。

 日本で電動自転車というとペダルをこいで走行する電動アシスト自転車のこと。中国の電動自転車はハンドルのアクセルを握るだけで走行するので、実質は電動スクーターだ。ペダルは走行中にバッテリーが切れた時に使うぐらい。2000元(約3万5653円)もあれば購入でき、時速は20キロ以上出るが免許はいらない。経済成長に伴い自動車保有者が増え、都市では交通渋滞が悪化している中、電動自転車は日常生活に欠かせない存在になっている。

 ただ、安全生産や災害管理を管轄する応急管理省によると、今年第1〜9月に全国で報告された電動自転車の火災件数は1万30件に達した。約8割がバッテリーの充電中に発生しており、その多くがリチウム電池の発火によるものという。9月20日未明には北京市通州区(Tongzhou)の集合住宅で火災が発生し、5階に住む家族5人が死亡した。3階の住民が電動自転車のリチウム電池を自宅で充電中、バッテリーが炎上したとみられる。バッテリーはフル充電すると数時間はかかるため、帰宅後の就寝中に室内で充電することが多い。しかし相次ぐ発火事故に、市民からは「爆弾を自宅に持ち込んでいるようなものだ」という声が噴出している。

2021.11.02 東方新報
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01163/00008/