エリン・ブレイディ


<韓国のコロナ新規感染は過去最多の7850人に達し、病床不足も深刻でついに本格規制強化へ方針転換>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるう韓国では、12月の第2週、自宅や療養施設で入院を待つ間に死亡した人がかなりの数に上った。

韓国保健福祉部の高官パク・ヒャンは報道陣に対し、新型コロナウイルス感染症の患者少なくとも17人が、病床不足のために死亡したと発表した。
これは、感染者急増に伴い、医療資源が枯渇していることを示す一例にすぎないとパクは述べている。

韓国では現在、集中治療室(ICU)の86%が埋まっており、1480人以上の患者が入院治療を待っている。
多くの国民が政府に対し、国民の命を守るため、厳格な行動制限を再び実施するよう求めている。

韓国政府は15日、規制を再強化すると発表したが、遅きに失した感は否めない。

ある医師連合は12月13日に発表した声明の中で、「今、私たちが絶対的に必要としているのは、医療システムが
(ウイルスに)対応する能力を回復できるようにするための緊急停止だ」と訴えた。

「手遅れになる前に、(政府が)より強硬な手段を講じてこの危機を止めなければ、死者数が急増する可能性が高い」

韓国で現在起きている感染爆発は、公衆衛生より経済を優先させることが事態を悪化させる証拠だ、と専門家たちは指摘している。
韓国民の81%以上がワクチン接種を完了しているが、ブースター接種を受けた人は13%しかいない。

ワクチンの効果は時間とともに低下するため、韓国当局は国民に対し、ブースター接種を受けるよう呼び掛けている。

韓国疾病管理庁によると、14日の新規感染者数は過去最高の7850人にのぼり、過去24時間の死者は94人に達した。

韓国政府は6日に、規制をわずかに厳格化したが、ウイルスの勢いは止まらなかった。
当局は、COVID-19患者のための病床を増やすよう病院に圧力をかけており、13日以降、2回目と3回目のワクチン接種の間隔を
4、5カ月から3カ月に短縮するなど、ブースター接種の迅速化を図っている。

コロナ以前の日常を取り戻すための第一歩として、文在寅政権が行動制限を大幅に緩和した11月初めの時点では、1日あたりの感染者数は2000人程度だった。

より大規模な集会、屋内での長時間の食事、学校の全面的な再開が可能になったが、ワクチン接種率が上昇しているため、
たとえウイルスが拡大し続けても、入院者数と死亡者数は抑制されると当局は予測していた。

しかし実際には、60代以上の入院が急増している。高齢者には、ワクチン接種が完了していない人や、
ワクチンが2月に導入されてすぐに接種を受けたため、免疫が低下している人たちが含まれている。

韓国政府は15日、行動制限を再強化すると発表したが、12月に入っても国民の規制疲れを理由に規制強化に二の足を踏み、
「過去に後戻り」することはないと宣言していた文大統領への逆風は避けられない。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/7850.php