国会運営や重要法案対応などで足並みをそろえてきた日本維新の会と自民党との「蜜月」が変化しつつある。維新が岸田文雄政権の安全保障観や中国を念頭に置いた国会非難決議への対応などを問題視し、距離を置き始めているからだ。夏の参院選に向けて、自民から保守層の支持を奪う意図も見え隠れするが、国会改革などで結果を出すには与党の協力が欠かせないというジレンマも抱える。(内藤慎二)

「台湾有事への対処は焦眉の急だが、施政方針演説に『台湾』の文字が一切抜け落ちていた」

維新の馬場伸幸共同代表は20日の衆院代表質問で、首相の安全保障観に違和感を示した。中国政府による人権侵害行為を非難する国会決議に関しても、与党側の調整不足で手続きが進まないと批判。「北朝鮮による日本人拉致問題について、どのような顔を下げて国際社会に協力を求めていくのか」と突き放した。

21日の参院代表質問でも維新の浅田均氏が「日本の外交基軸は日米同盟だが、直接対面しての首脳会談は実現していない」と追及した。

維新が政府・自民への批判を強める背景には昨年秋の首相交代がある。幹部は「安倍晋三、菅義偉両政権とは外交安保などの価値観を共有していたので苦言を呈する場面は少なかった。岸田政権の誕生で自民は変わりつつある」と懸念を口にした。

意思疎通の欠如も維新の自民離れを加速させている。安倍、菅両政権時代は国会対応などで連絡を密にしていたが、岸田政権とは交渉の窓口が閉ざされた。

維新が他党に必要性を訴えてきた「文書通信交通滞在費」(文通費)の制度改革について議論する政党間協議の場をめぐっては、自民側が立憲民主党との調整を重視する一方、一切の相談がなかったと維新の遠藤敬国対委員長が問題視。7日の記者会見で「今までには考えられない」と不満をあらわにした。

とはいえ、岸田政権の誕生は維新が参院選に向けて保守層に主張を浸透させるチャンスでもある。馬場氏は代表質問で「今国会は憲法改正に向けた議論が軌道に乗るか否かの重大な試金石になる。議論を滞りなく進めていくことが不可欠」と語った。自民が改憲論議に後ろ向きだった場合、「真の改憲政党は維新」とアピールする構えだ。

一方、野党第2党の維新が国会改革などで結果を残すには、数の力を持つ自民の協力が欠かせない。維新の最近の交渉態度に関し自民には「交渉の途中経過を外に漏らすなど実現を本当に目指しているとは思えない。パフォーマンスではないか」(中堅)との反発もあり、距離感を誤れば維新の実行力も問われかねないとの指摘もある。

https://www.sankei.com/article/20220121-YTTN2VGICZKE5NCS34GGVTVOKI/