延々と続く「椅子取りゲーム」のような就職活動

韓国ではいつになったら、若者が就職しやすくなるのだろうか。

 大統領選挙まで残すところあと一月半になったいま、心底そう思っている。どの候補者も若者の就職難に言及して、それを改善すると話している。だが5年前の大統領選挙でも同じ話を聞いたではないか。

 その点からみれば、韓国政府はこれまで全く成果を挙げられなかった。この数年、20代の雇用率は50%後半を推移したままだ。あくまでも個人的な意見ではあるが、完全な失敗である。そして何よりも不幸なのは、一向に改善されない就職事情に、若者が疲れ切っていることである。

 韓国の就職活動は、延々と続く「椅子取りゲーム」のようになってしまった。

就職活動では、企業が決めた定員以上に希望者がいる場合、当然のことながら椅子取りゲームになる。だが、それはあくまでも特定の企業が自社にふさわしい社員を選抜する段階での話だ。

私がここで言う「椅子取りゲーム」とは、そうした通常の意味ではない。少ない就職口に多くの若者が溢れるように押しかけ、我先にと入り込もうとする。韓国ではその状態が延々と続くのだ。

(略)

つまり問題は、就職口が増えない点にある。そのなかで、若者の競争心がひたすら煽られているのだ。私が「椅子取りゲーム」といったのは、そういう意味だ。

 高校生までは受験競争の渦中に置かれ、大学に入った途端に、「就業能力」の有無が測られる。それなのに将来が一向に見えてこない。

 就職競争が厳しいがゆえに焦って就職したものの、会社とのミスマッチで1年以内に会社を辞めてしまうケースも少なくない。そのなかには職場で嫌な思いをしたためにしばらく息抜きをする「求職放棄者」と呼ばれる人もいて、現在はその数が63万人にのぼるという。

こうした現実に、学生の心は疲弊してしまう。韓国に疲れてしまうのだ。

 だから、多くの学生が外国を目指す。私も、教え子たちから「日本に住んでみたいです」とよく言われる。私が日本人だからそう言うのかもしれないが、今の日本が彼女たちの期待に応えられるのか、そんなに未来が輝いて見える国なのかは、微妙なところだ。そんなことを学生に意地悪に話すと、「私たちは日本で暮らしたいんです!」と、私に言い諭すような言葉が返ってくる。それを聞くと、日本での暮らしだって苦労が多いのだから、彼女たちが失望しなければ良いのだがと、いつも思ってしまうのだ。

 3月に控えた韓国大統領選挙では、若者の投票動向が当落に大きく左右すると言われている。“彼らの未来”が選挙戦の大きなテーマの1つになるだろう。2月初めの旧正月ではどうやら政策討論会もあるようだ。

 果たしてその中で、「椅子取りゲーム」社会を終わらせるためのビジョンが打ち出されるのだろうか。若者が安心して暮らせる国造りは、そう簡単ではないであろう。

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68635
前スレ
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1643345435/