2月3日号の『週刊文春』にて、とあるスクープが報じられた。Netflixで配信中のドラマ『新聞記者』が、
明らかに森友学園の公文書改ざん事件を扱ったものであるにもかかわらず、制作陣は「全部フィクション」だと言い始めたのだ。

同事件を追い続け、赤木雅子さんとの共著『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』も出版した相澤冬樹氏がその経緯を語る。
(以下相澤氏による寄稿)

■正義の新聞、悪の週刊誌?
配信開始から1週間後、赤木雅子さんと私の共著『私は真実が知りたい』(文藝春秋)の担当編集者から連絡がありました。
「ドラマを見ましたか? 相当悪質ですよ!」

普段は温厚な編集者が、かなり怒っています。赤木雅子さんは最初からドラマ制作に協力を拒んだわけではありません。
その内容に納得していないことを知りながら、見切り発車のようにドラマが配信されたからです。

どこが悪質なのかは現在発売中の『週刊文春』(2月3日号)の特集記事に記されていますが、
実は記事に書かれていない怒りのツボがもう一つあります。『週刊文潮』です。

ドラマ『新聞記者』では、寺島しのぶさん演じる赤木雅子さんをモデルにした女性から、
夫の残した遺書を託されてスクープするのは『東都新聞』となっています。寺島さんを追い回して困惑させるのは『週刊文潮』の記者。
政権の意を受けて中傷記事を書くのは別の週刊誌だそうです。

私はそれを見ていないのですが、文藝春秋社の編集部から聞いた話では「正義は新聞社、悪役は週刊誌」という位置づけです。
これは事実とは逆ですね。
実際には、赤木雅子さんから託された「亡くなった夫の手記」を全文スクープしたのは『週刊文春』です。

雅子さんを追い回して怖がらせたのは新聞、テレビ、雑誌を含むメディア各社。加計学園事件で政権の意を受けたとしか思えない記事を書いたのは新聞社です。

フィクションだから、事実を逆転させるのは制作者の「勝手」なのでしょう。
しかし、よりによって悪役の週刊誌が『文潮』って……。
明らかに実在する『週刊文春』と『週刊新潮』を揶揄するような名前をつけるのは、“事実”に敬意を払う気持ちがドラマの制作者にはないのでしょう。

■『週刊文春』が急遽怒りの記事掲載
実際にあったことを都合よく切り取り、都合よく加工して使うから、見る人の誤解を招く結果になる。

それで責任を逃れようと「フィクション」で押し切るのはご都合主義です。
そもそも本当に単なる“フィクション”なら、赤木雅子さんの了解を取りつけようとする必要はないはずです。

これには『週刊新潮』もカチンときたようで、東京新聞の記者に取材したドラマの批判記事をネットに出しています。

この文春の記事は大きな反響を呼んでいるようです。
望月さんの著書『新聞記者』を原作に映画を制作し、これが日本アカデミー賞を受賞しました。
「映画の次はドラマ」と河村プロデューサーが考え、そこに望月さんも協力したのでしょう。

■答えをはぐらかす『東京新聞』
望月さん以上に責任があるのは『東京新聞』でしょう。

『週刊文春』の質問に対し、「取材源にかかわることや取材内容など業務にかかわることはお答えしておりません。
取材で得た情報等を報道目的以外で使用することはありません」と回答していますが、これはすべて一般論です。

今回、望月さんのケースがどうだったのかを問われているのですから、社としてきちんと事実関係を調べ、
少なくとも当事者の赤木雅子さんには事情を説明する責務があります。これでは答えのはぐらかしです。

それは『東京新聞』が厳しく指弾してきた、安倍首相や菅官房長官(いずれも当時)、そして財務省がしてきたことと同じです。
『東京新聞』の内部でも文春の記事について「真っ当な内容だ」という声が上がっていると聞いています。