(抜粋)

本人の言葉から浮かび上がったのは、一連の事件は在日コリアンへの差別意識と不当な憎しみの感情をもとにした犯行、つまり「ヘイトクライム」だったということだ。

さらに被告は、動機の一つとして「ヤフコメ民の反応」を期待していたと明かした。

「自分としては、申し訳ないという気持ちはないですね」

京都市内の拘置所でBuzzFeed Newsの記者と向かい合った被告は、自らの犯行について、そう振り返った。

こちらの目を真っ直ぐ見ながら、淡々と受け答えを続けた。ほかのメディアからも同様に取材を受けているからか、持論を語るときは饒舌な印象を受けた。

宇治市ウトロ地区での火事は、8月30日午後4時ごろに起きた。空き家付近から出火し、住民が暮らしている民家2棟にも延焼。7棟が全半焼した。

そして被告は、BuzzFeed Newsに犯行の動機をこう説明した。ヘイトクライムであることを、自ら認めたということだ。

「対人被害に最大限注意したうえで、(在日コリアンが)日本にいることに恐怖を感じるほどの事件を起こすのが効果的だったのです」

在日コリアンや朝鮮・韓国の人たちに対する差別感情が「少なからずありました」と言い切る被告に、なぜそんな感情を持ち始めたのかと尋ねると、本人が口にしたのは「不平等感」だった。

「コロナ禍で自分を含めて経済的に貧困状態にいる、保護を受けたくても受けられない人が多数いるような状況のなかでも、彼らは特別待遇を受けている」

在日コリアンに「在日特権」などの「特別待遇」があるというのは、何度否定されてもネット上で繰り返し広まってきた、古典的なデマだ。

被告の語る内容はこうしたデマと偏見に基づいたものであり、いずれも一方的で事実ではない。

被告は、排外主義的な団体などに所属したことはないという。

では、どこで情報を入手していたのか。尋ねると、「ヤフーニュースのコメント欄です」と語った。

「無料でニュースを読めるヤフーをみていることが多いので、コメント欄も目に入りやすかった。投稿には反応も多いし、コメントに対する賛否の評価もみられるので、ある意味、偏りのない日本人の反応を知ることができる場だと思っていました」

「主観ではない客観的な正しい情報を知るために、こうした評価のあるものは大いに参考になるのです」

さらに被告は取材に、「左派」の報道機関は「朝鮮半島側に偏った報道」を続けていると口にし、「ヤフコメ」こそが「客観的」だと強調した。

Yahoo! ニュースのコメント欄、通称「ヤフコメ」は、誹謗中傷や差別的なコメントなどが高評価を集め、多くの人の目に触れるままになってきたことから、問題視されてきた。

ページビューの多い記事ほどがコメントがつき、多くの人の目に触れることにもなる。AIや人的なパトロールで削除されるようになり改善は図られているが、書き込みから削除までは時間差がある。

削除されないままのものも少なくない。今回の放火事件をめぐっても、事件を賛美したり、擁護したり、憎悪を煽ったりするコメントがついたことで、批判の対象となった。

「日本のヤフコメ民にヒートアップした言動を取らせることで、問題をより深く浮き彫りにさせる目的もありました」

被告はそうも記した。ヤフコメという場で自分の考えが理解され、差別や憎悪が再生産されることを望み、犯行に及んでいたということになる。

多くの人々を恐怖に陥れたヘイクライムの背景にあったのは、生活苦と歪んだ被害者意識、さらに歴史への無理解をもとにした身勝手な動機。そして、偏見や差別意識を公にさらし、増幅させることのできる「場」の存在にもあったのではないか。

「私がこうして取材に応じているのは、信念がいまなお続いているからにほかなりません」と、被告は言った。その初公判は、5月16日に予定されている。

全文はソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/1678858ba32ee8900ddb0acc154fc4ef87a32064?page=1