旧統一教会の合同結婚式、「マンセー」と「アイゴー」交錯する壮絶儀式だった
ベテランカメラマンが撮った勝共連合と岸信介、世間騒然とさせた合同結婚式
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安倍晋三元総理銃撃事件で俄かに再びクローズアップされている旧統一教会(旧・世界基督教統一神霊協会)。

統一教会が、その巧みな勧誘方法やマインドコントロールの手法で日本でも信者も増やしていた。同時に、霊感商法で信者に法外な値段の壷や印鑑を買わせたり、入信してマインドコントロールされた娘や息子を呼び戻そうとする親の苦闘が報道されたりと、一時期何かと世間を騒がせていたという印象が強い。

【教祖・文鮮明と深い関係結んだ岸信介】
1954年に韓国で文鮮明によって創設された統一教会が、日本に支部を設立したのが1959年。それ以来、日本の保守系の政治家と関係を築いて来たというのは周知の事実だ。特に安倍元総理の祖父で日本支部設立当時の総理・岸信介は、1968年文鮮明が設立した「国際勝共連合」の日本支部発足に共に尽力するなど、その密接な交流は岸が死ぬまで続いた。

1984年、「国際勝共連合」の関連の会合に現れた岸を撮ったが、その存在感は90歳を目前にしても周りを威圧していた。「昭和の妖怪」といわれた岸のその大きな目の奥には確固たる「反共産主義」の情念の残り火が鬼火のようにチラチラと燃えていた。

この岸と勝共連合・統一教会との関係は、岸の死後も安倍晋太郎、安倍晋三と三代にわたって続いた。

さて、世間の統一教会への関心が最高潮に達していたのが、1992年8月25日の韓国ソウルでの統一教会合同結婚式の開催だろう。

結婚式の参加者としてアイドル歌手だった桜田淳子や新体操の元オリンピック代表、山崎浩子らの名前が発表されたのだ。

結婚相手を教祖が選ぶという異様さ、何万人という人間が一堂に会して見ず知らずの相手と結婚式を挙げるという驚き。とても普通の人間には理解できないことだった。

私はその合同結婚式を取材するためにソウルに向かった。ソウル郊外にあるオリンピック総合スタジアムの入り口で受付を終え、暗い廊下を歩いてスタジアムに足を踏み入れた時の、あっと息を呑んだ瞬間の事は今でも忘れられない。

【巨大スタジアムを埋め尽くしたウエディングドレス姿の花嫁たち】
巨大なスタジアムが純白のウエデイングドレスで埋まっていたのだ。この日の為に世界中から3万625組のカップルが集まったという。

その光景は不気味としか言いようがなかった。その中にどこか晴れ晴れとした風の桜田淳子や山崎浩子の姿もあった。

やがて教祖、文鮮明と妻の韓鶴子が冠を頭に乗せ、クリーム色に金筋のガウンをまとって姿を現した。すると3万625組の男女が一斉に「ムーン・ソンミュン、ハン・ハクチャ、マンセー(万歳)!」と連呼する声がスタジアムに響き渡った。

式は進んでいったが、真夏のソウルはうだるように暑い。あちこちで花嫁が熱中症で倒れ始めた。広告塔である桜田淳子などのVIP以外には飲み物も与えられていない。ラテンアメリカ出身らしき一人の花婿は隣で倒れた自分の伴侶を助けるでもなく、じっと文鮮明の顔を見つめたまま微動だにしない。やはり異様だ。

【借金して合同結婚式に参加する信者も】
ここに集まった信者たちは一人あたり参加費30万円と感謝金140万円を統一教会に払ったという。アフリカなどの貧しい開発途上国から来た花婿は、田畑を売り、周りから借金までしてギリギリで来たとも聞いた。

それでも韓国人カメラマンのキムさんによれば「アフリカ人は韓国の女性と結婚してリッチになるんだよ。韓国人は金を持っているから」というが、話の真相は定かではない。

(つづく)

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70978
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