習近平、異例の3期目目前の敏感な時期 
バイデンも中間選挙前で強硬になる可能性も 
「ウクライナ戦争の中で最悪のタイミング」批判も 
中国軍の武力示威強化で偶発衝突の可能性高まる

「タイミングは最悪」

 「ニューヨーク・タイムズ」のコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は1日、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性についてこのように評価しつつ、「それこそ無謀だ」と批判した。米国と欧州がウクライナ戦争に集中している中、ロシアを直接支援しているわけでもない中国をなぜ刺激するのかというのだ。

 タイミングが悪い理由はその他にも複数ある。中国の習近平国家主席は、10月に行われる第20回中国共産党全国代表大会で、政権担当が2期で終わった前任者たちの伝統を破り、3期目の確定を狙う。政治的に敏感な立場にある彼にとっては経済状況も不安要素だ。コロナ封鎖などのため、第2四半期の国内総生産(GDP)の成長率は0.4%にとどまっている。

 習主席はまた、「台湾統一」を「中華民族復興」に向けた一つの目標としてきた。しかし米国のジョー・バイデン大統領は就任後3度も、中国の台湾侵攻の際には直接軍事介入しうる旨述べている。ホワイトハウスはその度に発言を撤回しているが、台湾防衛をめぐり「戦略的曖昧さ」を放棄したような発言は、中国をさらに敏感にした。ニコラス・バーンズ中国駐在米国大使はこのような雰囲気について、米中が関係の正常化を模索し始めた1972年以降で、両国関係は「最低点」に達していると述べている。習主席が先週のバイデン大統領との電話会談において、台湾問題で「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」と言ったという中国外交部の発表も、このような雰囲気を代弁する。3期目を控えた習主席は弱い姿勢を見せたがらないだろうという観測は多いが、それは11月に中間選挙を控えたバイデン大統領も同じだ。

 ペロシ議長には、1991年の北京訪問の際に同僚議員たちと共に天安門広場で、英語と漢字で「中国の民主主義のために命をささげた人々に」と記された横断幕を取り出したという前歴もある。中国政府が反逆者として扱うダライ・ラマに会ったり、チベット人の住む西蔵自治区の首都ラサを訪問したりしたこともある。

 米国の外交問題評議会のデイビッド・サックス研究員は「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、「過去の危機の際、中国は米国との建設的関係の維持に最も重要な利害を持っていた」と述べた。1995〜96年の第3次台湾海峡危機、1999年の米軍によるユーゴスラビア中国大使館誤爆、2001年の中国戦闘機と米国偵察機の衝突がそのようなケースだった。しかし同氏は「関係が急激に悪化した今、習主席としては維持すべきものがあまり残っていないと考えられる」と述べた。

 ペロシ議長の台湾訪問の既成事実化に対しては、中国側の反応もさらに激しくなっている。中国軍は南シナ海で2日から6日まで訓練を実施するとし、船舶の進入禁止を通知している。中国軍は先月31日に極超音速ミサイル「東風(DF)-17」と推定される飛翔体が輸送起立発射機(TEL)から発射される様子を撮影した映像も公開している。DF-17の発射実験シーンの公開は今回が初。

 今後、中国がどれほど強硬に出てくるかをめぐっては、様々な見通しが示されている。大規模な軍事演習を実施する、台湾の防空識別圏に投入する軍用機を増やす、などの予想も出ている。中国軍は昨年11月、米国の議員が台湾を訪問した直後、27機の軍用機を台湾の防空識別圏に侵入させた。1996年の第3次台湾海峡危機の際のように、台湾海峡にミサイルを発射するという強硬な対応を取る可能性もある。最近、台湾海峡を国際水路と認めないとした中国が海峡封鎖に言及する、というシナリオすら提起されている。

 しかし、大規模な政治イベントを前にして、習主席は状況を極端へと追いやろうとはしない公算が大きいと見られる。米中首脳は対面会談に向けて調整を進めることを決めている。しかし、台湾周辺に軍用機と艦艇を大規模に投入すれば、これに対応する台湾軍や米軍との偶発的な衝突の可能性は高まることになる。

ワシントン/イ・ボニョン特派員
http://japan.hani.co.kr/arti/international/44182.html