北朝鮮、軍事拠点標的の戦術核開発 ICBMは全米射程に
防衛白書を読む③

防衛白書は北朝鮮について「日本の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と言及した。低空を変則的な軌道で飛ぶ短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返しているとして「さらなる挑発行為も考えられる」と分析した。

金正恩(キム・ジョンウン)総書記が2021年、軍事力の強化策のひとつに「戦術核兵器」を挙げたと紹介した。これまでは大陸間弾道ミサイル(ICBM)などに搭載し、相手国の都市などを標的にする威力の高い戦略核を開発しているとみられてきた。

戦術核は核兵器の出力を抑えて敵の軍事拠点や部隊などの攻撃を想定する。「使える核」とも呼ばれ核使用のハードルが下がるという見方がある。ウクライナに侵攻したロシアは戦術核の使用をちらつかせて関係国を威嚇した経緯がある。

核の運搬手段となるミサイルの開発も進めた。白書は22年4月に「新型戦術誘導兵器」と称するミサイル、19年以降は鉄道発射型や潜水艦発射型など多様な形態で短距離弾道ミサイル(SRBM)を撃ったと説明した。

最近の弾道ミサイル発射の特徴も列挙した。①長射程化②正確性や連続射撃能力などの向上③奇襲的な攻撃能力④低高度で変則的な軌道⑤発射形態の多様化――の5つだ。

長射程化を巡っては22年3月に発射したICBM級の射程が1万5000キロメートルを超えうると記した。米国全土に届く。通常より高い角度で迎撃が困難になる「ロフテッド軌道」も目立つ。

防衛省によると北朝鮮は22年に推定を含めて28発以上の弾道ミサイルを撃った。すでに年間の過去最多を記録した。

ミサイル技術が高まれば海上のイージス艦と地上の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の二段構えでの迎撃は難しくなる。

政府は「反撃能力」の保有を検討する。日本を攻撃すれば反撃されると思わせることで抑止力を高める。ほかに手段がない条件下では「自衛の範囲に含まれ、基地をたたくことは可能だ」と解説した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA05BZT0V00C22A8000000/