訪日外国人編(3) 中国に頼りきった日本観光業のツケ 招致の鍵握るのは脱マスク 人気は着用義務のないタイ、シンガポール

日本政府は6月、外国人観光客の受け入れを部分的に再開した。とはいえ、今のところ、外国人観光客が約5兆円を落としていた2019年の状況には程遠いレベルだ。

しかし、そもそもパンデミック以前の訪日バブルは、世界的に見てどの程度の規模だったのだろうか。

国連世界観光機関によると、2019年、日本の外国人観光客受入数は約3188万人で、世界12位だった。一方で、韓国は1750万人で25位。ただ、約1億2500万人と約5200万人という日韓の人口差を考えると、国民1人当たりの外国人観光客受入数では韓国に軍配が上がる。さらに国土面積当たりの受入数となると、日本は4分の1ほどの面積しか持たない韓国に大きく水をあけられていることになる。

ちなみにトップ3は17年から19年までフランス、スペイン、アメリカという順位で不動だった。受入数は、上位2カ国はいずれの年も8000万人以上を記録している。もちろん、域内の往来が自由であるEU加盟国という特異性もあるだろう。

ただ言えるのは、パンデミック以前の訪日バブル期には、まるで日本だけに外国人観光客が殺到していたかのような印象も強いが、実際はそうではなく、観光ブームは世界的な現象だったということだ。

12年時点の日本の外国人観光客受入数は、836万人と33位だったことを考えると、数字上は大きな躍進ではある。だが、19年までの受入数の増加分の約3分の1は中国人観光客。そして19年の訪日外国人のうち、約3割が中国人観光客だった。

その中国はというと、世界においても最も厳格なコロナ規制を堅持したままでいる。帰国時の隔離などのわずらわしさから、今現在、海外旅行へ出かける中国人はごくわずか。そうした状況は、今後もしばらく継続されそうだ。

中国人観光客という太客に頼れぬ今、日本がパンデミック以前の観光収入を取り戻すには、他の国からの観光客を誘致するしかない。

しかし筆者の友人であり、大の日本好きでもあるパリ在住の40代のフランス人男性はこう本音を漏らす。

「1年半以上続いたマスク規制は本当に悪夢だった。フランスでは、今年3月までに公共の場所でのマスクの着用義務が解除された。そんなことから、マスクをしなければならない場所に行きたくないという人は多いと思う。私も同じアジアなら、マスクをしなくていいタイやシンガポールに行く。もちろん日本にも行きたいけど、今じゃない」

パンデミック初期、欧米諸国ではマスク着用に対する抵抗感が、アジア諸国よりも格段に大きかった。それは2年以上のコロナ禍を経た今でも同様のようだ。

感染状況との兼ね合いや国民の不安の解消など、解決すべきこともあるだろうが、脱マスクは観光産業、ひいては日本経済の復活にも重要なステップとなる。

■1都3県に住む外国人は120万人とも言われ、東京は文字通りの多民族都市だ。ところが、多文化共生が進むロンドンやニューヨークと比べると、東京在住外国人たちはそれぞれ出身地別のコミュニティーのなかで生活していることが多い。中韓はもとより、ベトナム、ネパール、クルド系など無数の「異邦」が形成されているイメージだ。その境界をまたぎ歩き、東京に散在する異邦を垣間見ていく。境界の向こうでは、われわれもまたエイリアン(異邦人)という意味を込めて。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

https://www.zakzak.co.jp/article/20220820-NPMLSVIUVZJPHN2BBGH4YSLBFU/
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