【ソウル=溝田拓士】ソウルの繁華街で10月29日夜、若者らが折り重なるように倒れて多数死亡した雑踏事故で、韓国政府の事故対策本部は31日の記者会見で「(窃盗や麻薬犯罪など)不法行為の防止や摘発に焦点を当てていた」と述べ、雑踏警備に不備があったことを事実上認めた。イベントとしての主催者がいないハロウィーンは、事前の警備計画の対象外で、安全管理上の責任があいまいだった可能性がある。

 事故で死亡した日本人2人のうちもう1人は、埼玉県川口市の小槌杏(こづちあん)さん(18)と分かった。親族が31日、病院で遺体を確認した。小槌さんは、韓国の大学に語学留学中だったという。

 31日夜現在、事故の死者は155人、負傷者は152人で、死傷者の合計が300人を超えた。死者の7割超は10~20代で、中高生も6人含まれる。外国人の犠牲者は、日本人の女性2人を含む14か国26人に上った。

 記者会見した韓国警察庁幹部によると、現場の梨泰院(イテウォン)に仮装した若者が集まる毎年恒例のハロウィーンには2017~19年には30~90人の警察官を配置させた。今年は137人を派遣する増員態勢で臨んだが、「現場統制より犯罪防止中心」だったという。

 韓国のKBSテレビによると、地下鉄梨泰院駅の当日の乗降客は、1年前の約5万9000人の倍を超える13万人だった。新型コロナウイルス規制が解除されたことを受けて、当局の予想をはるかに上回る人々が人気スポットに殺到したことがうかがえる。

 韓国政府の安全管理マニュアルでは、自治体や民間団体が主催する行事では、安全管理計画を警察や消防当局に事前に届ける必要がある。今回は主催者がいないため、安全面での事前チェックが入らなかった。

 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は31日の大統領府の会議で「今回のように主催者がない自発的な行事にも適用できる、事故防止のための安全管理システムを整えなければならない」と述べ、対策を急ぐよう指示した。

10/31(月) 21:19配信
読売新聞オンライン
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