尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が東南アジア歴訪期間(11~16日)に「韓国版インド太平洋戦略」を強調したことで、外交政策の焦点が北朝鮮核問題から分散するのではないかという懸念の声があがっている。韓国の直接的な国益とは程遠い紛争に巻き込まれる可能性が高くなったという指摘もある。

 尹大統領は前回の歴訪で韓米日プノンペン共同声明に合意するなど、ASEANと主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)期間中、「北東アジア」よりは「インド太平洋」を強調した。

 尹大統領は歴訪の最初の訪問先であるカンボジアのプノンペンで開催された「韓・ASEAN首脳会議」で、「我々はインド太平洋時代を生きている」とし、「世界人口の65%、国内総生産(GDP)の60%以上を占め、全世界の海上運送の半分がこの地域を通過する」として、インド太平洋戦略を紹介した。

 尹大統領は、プノンペン共同声明で「北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する糾弾と拡大抑止の強化」を掲げると同時に、南シナ海航行の自由やインド太平洋地域の現状変更の試みへの反対、台湾海峡の平和安定維持など中国封鎖に焦点を置いた米国と日本の関心事にも合意した。北朝鮮の7回目の核実験が迫っていると見られるなど、北朝鮮の核問題が深刻な状況で、韓国が直接利害関係国ではない南シナ海の領有権紛争や台湾の武力衝突などにも外交力が分散する恐れがあるわけだ。

 「北東アジア」からインド太平洋への焦点の移動は外交部の動きからもうかがえる。

 尹大統領が今回発表したインド太平洋戦略は、文在寅(ムン・ジェイン)政権が進めていた「北東アジアプラス責任共同体」に代わるものだ。北東アジアプラス責任共同体は「北東アジア平和協力プラットフォーム」と「新北方・新南方政策」を二本柱にし、アジアに中心を置いた外交戦略だった。朝鮮半島問題の解決を利害関係国に限定せず、域外に分散させたわけだ。

 17日、外交部が共に民主党のキム・サンヒ議員室に提出した「北東アジア平和協力プラットフォーム」関連資料によると、外交部は同機構の名前を8月から「東アジア協力フォーラム」に変更した。外交部は名称を変え、協力対象国の範囲を従来の「韓国、北朝鮮、ロシア、モンゴル、中国、日本、米国」から東南アジアとインド、太平洋島嶼国などに拡大した。

 このため、インド太平洋地域への外交焦点の移動が北朝鮮の核問題の解決に対する集中力を分散させるのではないかという指摘がある。中央大学のイ・ヘジョン教授は「朴槿恵(パク・クネ)政権は『北東アジア平和協力構想』を、文在寅政権は『新北方・新南方戦略』を掲げるなど、保守と革新を問わず、これまで韓国外交には朝鮮半島を巡る地政学的戦略を持ってきた空間があった」とし「インド太平洋戦略を掲げる尹錫悦政権の外交政策は(その空間を拡大したことで)朴槿恵政権に比べても韓国の外交的選択可能性を狭める側面がある」と分析した。

シン・ヒョンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入:2022-11-17 21:01
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1067790.html 訳H.J

11/18(金) 7:49配信
ハンギョレ新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c2f6a29a3975193459445b1e4419bfb0cdcb69f