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 かつて韓国ドラマでよく描かれていた身分違いの恋。物語の中の2人は葛藤の末に結ばれてハッピーエンドを迎えるものだが、現実はそう簡単にはいかないようだ。

■「金のスプーン」と「泥のスプーン」は幸せになれない

 12月9日から日本で公開される韓国映画「ハッピーニューイヤー」は、数時間後に“ニューイヤー”が迫る高級ホテルを舞台に、さまざまなラブストーリーや人間模様を描いている。その中のひとつが高級ホテルのCEOと、彼が宿泊するスイートルームを掃除するハウスキーパーの女性の恋物語。女性は周囲から「玉の輿を狙っている」と白い目で見られる。それも当然のことで、韓国には“スプーン階級論”があり、高級ホテルのCEOのような富裕層は“金のスプーン”、一方の低所得世帯の出身者は“泥のスプーン”といわれている。ことさら生まれの違いを気にする傾向が強く、それは華やかな芸能界で活躍する国民的女優でさえ、例外とはならなかった。

 人気女優のコ・ヒョンジョンは90年代、韓国ドラマの金字塔といわれる「砂時計」でヒロインを演じ、トップスターとなった。その後、サムスンの故・李健熙(イ・ゴンヒ)会長の甥で新世界グループの副会長と結婚。芸能界を引退し、サムスン一族の一員となる。まるでシンデレラストーリーのようだった。

 ところが姑は元女優の嫁を気に入らなかったようだ。家では娘たちと外国語で会話し、コ・ヒョンジョンをイニシャルで呼ぶなど、彼女が孤立するように振る舞ったと伝えられている。

 人気女優がどんなに良い嫁を演じても、財閥家からすれば階級の違う“よそ者”でしかなく、“家族”にはなれなかった。結婚生活は8年で終止符が打たれ、親権を放棄させられた彼女は、子供たちにも会えなくなった。

 サムスンでは、故・李会長の長女で「ホテル新羅」社長の李富真(イ・ブジン)氏も、周囲の反対を押し切ってグループの平社員と結婚している。15年の結婚生活を経て離婚申請したのは李富真氏のほうで、捨てられた形の夫は日本円で1000億円超の財産分与を求めて訴訟を起こし、世間の注目を集めた。

 訴訟は5年以上にも及んだが、ドラマや映画で描かれる美しい純愛はどこにも見当たらない。逆玉婚を待ち受けていたのもバッドエンドだった。

 韓国には「肛門が裂けるほど貧しい」ということわざがある。生活が苦しいと、便秘予防になる豆さえも食べられない。そんな“泥スプーン”のレベルでなくとも、身分が違う結婚はハードルが高いのだ。

(児玉愛子/韓国コラムニスト)
11/26(土) 9:06配信
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