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渡韓した日本人アイドルが凱旋
出場が決まり、東京都内で開かれた会見で笑顔を見せるIVEのメンバー(読売新聞文化部・辻本芳孝撮影)

「第73回NHK紅白歌合戦」の出場歌手が11月16日に発表され、韓国で人気のK-POP界からTWICE(トゥワイス)、IVE(アイブ)、LE SSERAFIM(ル・セラフィム)と、3組のガールズグループが選出されました。複数同時出場は、東方神起、KARA、少女時代が顔をそろえた2011年以来11年ぶり。紅白に吹く“K旋風”の背景を、K-POPに詳しいライターの酒井美絵子さんに寄稿してもらいました。

今回の紅白には他にも、メンバー全員が日本人ながら、韓国の大手芸能事務所JYPエンターテイメントに所属するNiziU(ニジュー)、韓国の人気オーディション番組の日本版から生まれたJO1(ジェイオーワン)など、韓国に縁のあるアイドルグループが出場を決めました。K旋風を読み解くキーワードは、「Z世代からの圧倒的認知度」「進化した刀群舞(カルグンム)」、そして「シェア力」の三つです。

TWICEは、「2011年以降に韓国で生まれた女性アーティストの中で最もCDを売り上げた」と言われる、韓国の国民的グループ。17年には日本でも「TT」ダンスブームを巻き起こし、ドーム公演の常連です。日本でも圧倒的な認知度を誇り、4度目の出場も納得の選考といえるでしょう。

対して、IVEとLE SSERAFIMは、本国でデビューしてまだ1年もたたない新人グループです。日本でのテレビ出演はほとんどなく、唐突感を覚える人もいるかもしれません。が、実は韓国はもちろん日本での売り上げ成績が良く、特にZ世代で絶大な人気を誇るグループなのです。

特に今年10月に日本デビューを果たしたIVEは、ビルボードジャパンチャートにおいて複数曲でストリーミング回数1億回再生を突破。これはBTS、TWICEに続き、3組目となる快挙です。また、「Z世代女子が選ぶ、2022年トレンド大賞」(SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」による調査)の「アーティスト部門」で1位にランクインするなど、Z世代のアイコンとなっています。

一方のLE SSERAFIMは、日本デビューはまだ果たしていないものの、TikTok JAPANチャートの常連です。元AKBグループ出身のSAKURA(宮脇咲良)さんが在籍していることもあり、J-POPアイドルグループファンからの知名度も高く、今後の日本での活動に注目が集まっています。

3組とも「日本人メンバー」がいることも、出場理由の一つになっているかもしれません。TWICEのサナさん、ミナさん、モモさんは、昨今の「日本人K-POPアイドル」の中で最も成功した例です。2000年代初めのグループにも、「日本人メンバー」は存在していましたが、15年のTWICEの成功以来、K-POPアイドルを夢見て渡韓するZ世代が急増しました。そのため、IVEのREIさんなど、今では日本人K-POPアイドルがたくさん活躍するようになりました。

K-POPの“中の人”としてスターになった彼女たち。幼い頃からK-POPに親しんできたZ世代にとって憧れの存在です。紅白で日本に凱旋し、パフォーマンスする姿に夢を重ねるZ世代も多いはずです。

(中略)

今回の紅白は、「みんなでシェア」をテーマに掲げています。実はこのシェアこそ、K-POPのお家芸ともいえるのです。昨今のような世界的ブームを巻き起こすことができた背景には、SNSやインターネットの戦略的利用があります。早くからYouTubeのような動画共有サイトでMVや音楽番組を無料公開――つまりシェアすることで、韓国は自国のコンテンツを世界へ拡散してきました。ファンも、事務所の公式発表や推しの芸能人の発信を“自発的に”翻訳し、シェアすることで、K-POPブームを後押ししてきたのです。

NHKの公式ホームページには、「スマホやPCでシェア。写真や動画でシェア」とあります。K-POPグループを通して、紅白を世界に拡散したい。NHKには、そのような思惑もあるのかもしれません。売り上げ成績もよく、話題性があり、絵にもなる。そして、テーマを体現している――。そう考えてみると、今回の紅白におけるK-POP勢の躍進も、合点がいくのではないでしょうか。

11/29(火) 12:11配信
大手小町(OTEKOMACHI)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a0e518fae4b1201b3d6bcfc7c7a365f6f313f65f