「日本が大好き」な韓国の若者たちの胸の内とは

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
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 まずは下の写真をご覧いただこう。
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 韓国の大学で教鞭をとっていると、学生や卒業生と一緒にカフェに行ったりすることがよくある。これはそのときに撮ったものだ。
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 場所は、韓国一の芸術大学、弘益(ホンイク)大学の近くにある延南洞(ヨンナムドン)。若者たちが多く集う、インスタ映えする洒落た界隈だ。

 飲み物が2つしかないからおわかりになるだろうが、その日は卒業生と2人きりで会っていた。彼女は大の「日本好き」で、コスプレもたまにやっている。この日も、コスプレとまではいかないが、いかにも可愛い服装で身を包んでいた。そんな恰好の若い女子と夜の帳(とばり)を歩いていたら大きな勘違いをされそうだが、ご覧の通り太陽が燦燦と照っている。

 この写真をインスタグラムにアップしたところ、複数の学生から店の名前を言い当てられた。ソウルの若者の間で広く知られている、人気のカフェなのだ。

 店内には日本のキャラクターグッズや小物がところどころに置かれているが、決して過剰というわけでははなく、もともと内部がスタイリッシュにつくられているので居心地は良い。そのせいか、この店にいる客のほとんどが女性グループやカップルだ。男性だけで、というのは見たことがない。

 私は女子大勤務だから、女性たちのなかで一人で過ごすことには慣れている。客が女性ばかりの店に行くのに抵抗はないし、学生とコミュニケーションを図るためにも、女性が好むような店にはなるべく足を運ぶようにしている。だが、この店のような「可愛い店」にはさすがに一人では入ったことがない。それには、ちょっと勇気が要る。私の“女子力”もまだまだなのだろう。
これこそが日本のイメージ?

 それにしても、韓国の若い女性たちにとって写真のスイーツが「これこそ日本(のイメージ)」だと言ったら、読者の皆さんはどう思われるだろうか。

 日本の多くの人は首を傾げてしまうのではないだろうか。私も、今でもなぜこれが「日本」なのか、感覚的にわからない。

 ただ、どの教え子も、そう口をそろえるのだ。かわいくて、アニメから飛び出してきたような、あるいはサンリオが展開するようなファンタジスティックな世界。決して激しくなく、穏やかで、優しさと楽しみを感じさせるもの。それこそがまさに日本のイメージであり、彼女たちにとっては憧れでもあるのだ。

 いや、日本のイメージとしては、温泉や神社仏閣など、世界に広まっているものがもっと他にあるだろうと反論する人もいるかもしれない。もちろん、韓国女子たちはそういったものも知っている。

 ただ、それらはアニメや映画、ドラマなどの中でしかお目にかかれない。彼女たちにとっては、目の前にある写真のようなスイーツこそが、日本らしさを凝縮した、リアルな実感を伴う「キャラクター」なのだ。
日本の本当の姿とは程遠い

 これも日本政府が推進してきたクールジャパン政策の成果の1つといえるのかもしれない。だが、私はもともとクールジャパン政策が好きではない。そのせいもあるのかもしれないが、そうした学生たちの嗜好にかなり複雑な心情を抱いている。

 そもそも彼女たちが日本に求めているイメージは、アニメなど産業的に作られたコンテンツからもたされたものがほとんどであり、日本の本当の姿とは程遠い。日本の家には確かに小物が多いが、こんなポップな小物がずらりと並んでいるかというと、決してそんなことはない。

 それに、こうしたものに魅せられる韓国の女性は基本的に10代~20代前半である。そのお年頃を過ぎた世代に話を聞くと、「もはや関心はほとんどない」という。それなら日本のイメージはどんなものかとさらに質問をぶつけてみると、ほとんどの場合は言葉に窮してしまい、何とか絞り出してみたものの「やっぱり可愛いものですかねぇ」という回答で落ち着いてしまう。
以下ソースから

2022.12.20(火) 平井 敏晴
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73166?page=4