北海道上士幌町は、高い山々に囲まれた田舎町だ。総面積の76%が森林。主な産業だった林業が衰退し、若者たちが働く場を求めて故郷を離れ、大都市に移り住んだ結果、人口が減少し「消滅可能性都市」にも数えられた。1955年には1万3600人だった人口は、60年後の2015年初めには最低値の4870人台にまで減った。ところが、衰退の道を歩んでいた町には1年後に変化の兆しが見えた。町役場が全国初の無償保育など「まちづくり」に積極的に乗り出したことで、人口が増加に転じ、2018年4月には5000人台を回復した。転入者の80%以上が20~40代の若年層という点も注目に値する。

 そのきっかけになったのは日本政府が「地方創生」のために2008年から導入した「ふるさと納税」制度だ。納税者が応援したい地方自治体に寄付すれば、所得税と住民税を控除する制度だ。日本のノンフィクション作家、黒井克行が書いた『ふるさと創生-北海道上士幌町のキセキ』には、この町がふるさと納税制度を足掛かりとして「奇跡的な飛躍」を成し遂げた過程が描かれている。2013年には、税収が6億円に過ぎないこの町に2億4350万円の寄付金が入った。北海道で最も多い金額だった。2016年には21億2482万円を記録した。3年間で10倍に増えたわけだ。寄付者は年間10万人にのぼる。

 上士幌町の成功要因としては、町の特産品を用いた魅力的な返礼品、都市民との活発な交流、寄付者に効能感を与える寄付金の使用などが挙げられる。全国で初めて寄付金で基金を作り、安定的な無償保育と高齢者福祉を実現するなど、暮らしやすい町を作ったのも功を奏した。

 韓国でも今年から新たに日本のふるさと納税制度をモデルにした「ふるさと愛寄付制度」がはじまる。住所を置いている場所以外の自治体に1人当たり年間500万ウォン(約52万円)を上限として寄付できる。10万ウォン(約1万400円)までは全額、それ以上は16.5%まで税額控除の恩恵も受けられる。同制度が順調に定着すれば、貧弱な地方財政を補えるだけでなく、返礼品事業で地域経済も活性化しうる。「関係人口」を増やして地域消滅という難題を解決するきっかけにもなり得るだろう。韓国でも「上士幌町の奇跡」が起きることを期待している。

イ・ジョンギュ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
1/2(月) 9:39配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/c2ff2b0d59f19327354218019d42672a75b43ae5