【シンガポール=森浩】フィリピンのマルコス大統領は3日、大統領就任後初めて中国を訪問した。4日に中国の習近平国家主席と会談する。マルコス氏は米国との同盟関係を強化して南シナ海問題で中国に譲歩しない姿勢を示す一方、経済面では中国との連携強化を期待する。フィリピンはインド太平洋地域の中心に位置し、戦略的重要性が増している。マルコス氏は米中双方から利益を引き出したい考えが強く、中国の出方が注目される。

マルコス氏は3日、訪中に先立って「中国との包括的な戦略協力の新しい章を開くつもりだ」と述べ、両国の関係深化に期待感を示した。訪問には習氏と旧知のアロヨ元大統領も同行することになった。

マルコス氏は、親中的なドゥテルテ前大統領の外交方針を転換し、米国との関係修復を目指す姿勢を鮮明にしている。昨年11月には「米国を含まないフィリピンの未来はない」とも述べ、米軍がフィリピンで巡回駐留できる拠点を増やすことで米側と合意した。

南シナ海問題をめぐってマルコス氏は国内保守派の意向もくみ、「領土は1インチも譲らない」と主張し、実効支配を強化する中国に反発している。フィリピン外務省は今回の訪中で、南シナ海問題での「誤解をなくす」ため、外交当局間の直接対話を開始する協定に署名するとしている。

一方、マルコス氏の訪中には多数の実業家が同行しており、最大の貿易相手国である中国側に投資拡大を呼びかける考えだ。マルコス氏によると、滞在中には経済分野を中心に10以上の政府間合意が締結される予定だという。

中国はマルコス政権の過度の米国接近は避けたい考えがある。中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は昨年12月30日の記者会見で、中比首脳会談では「地域および国際問題に関する深い意見交換」が行われると述べた。その上で、農業やエネルギーなどの分野で両国が連携し、「中比友好の新たな黄金時代を作る」とも言及し、マルコス政権との関係緊密化を目指す姿勢を示した。

Yahoo!Japan/産経新聞 1/3(火) 19:39配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/a9cce8e3e74f8833c147716d9cbe8e4e30c03bbb