コロナの厳しい感染対策に反対する「白紙デモ」への中国政府の対応を見ると、その言葉と行動が完全に矛盾していることが分かる。昨年11月26日に大規模な抗議行動が起こった際、中国政府は3日後に「敵対勢力を断固排撃する」という強硬なメッセージを出した。ところが実際は正反対だった。このメッセージが公開された当日と翌日には鄭州と広州の封鎖が解除され、その後も首都・北京を含む全国で感染対策が緩和された。デモから10日後の12月7日には事実上「ゼロコロナ廃止」を意味する「10の防疫緩和措置」が発表された。デモ隊は政府の矛盾した言葉と行動で混乱し、街に出る力を失ってしまった。

 中国の言葉と行動が矛盾するのは非常に戦略的だ。口では強硬な言葉を発し、行動では現実的な線で妥協することで交渉で優位な立場を占めようとする。そのため中国を相手に対する多くの国や企業、個人は相手の攻撃がどこから来るか分からず、不安を感じて戸惑ってしまう。

 中国は韓国に対しても言葉と行動が矛盾するケースが非常に多い。中国はいわゆる「限韓令(韓流制限令)など存在したことはない」と言い張る。けれども実際は中国人も2016年のTHAAD(高高度防衛ミサイル)事態後、中国メディアから韓国コンテンツが消えたことを認識している。しかし韓国大統領室は昨年11月22日、韓中首脳会談をきっかけに中国OTT(オンライン動画サービス)で韓国映画サービスが再開されたことを明らかにした。

 北朝鮮の核問題でも中国は「韓半島問題のために建設的な役割を果たしたい」と一貫して語ってきた。しかし北朝鮮の挑発を受け複数回にわたり緊急招集された国連安全保障理事会で中国は北朝鮮制裁に反対票を投じ、追加制裁はもちろん非難声明さえ採択できない状態だ。

 このような中国の言葉と行動の矛盾はこれをいかに解釈するかが重要だ。中国で生まれ育った平凡な市民も共産党と政府の指針、政治家の動向をしっかりと見極めて上部の意中を推し量っている。中国国営CCTVで習近平・国家主席が欧米の首脳と会談したというニュースが報じられた場合、中国駐在の外信記者たちは欧米のニュースをまずチェックする。双方の報道内容を比べて中国が強調しあるいは隠しているメッセージを見いだすためだ。外交関係者の間でも中国は高度に「暗号化された国」と考えられている。

 中国の対北朝鮮政策、対米政策、半導体戦略、経済政策など韓国の国益と直結する問題において中国の言葉と行動を分けて考えることに韓国人はもっと慣れなければならない。中国が発する一言に一喜一憂するのではなく、中国の実際の動きがどこに向かっているかを見極めねばならないのだ。昨年11月28日に北京でデモの現場を取材した際、ある中国人は「党も経済が最悪なので感染対策の緩和を望んでいるようだ」としながらも「体制を批判さえしなければ今日のデモは感染対策の緩和を前倒しする大義名分になるだろう」と語った。中国という国を相手にするときに解読の力を高めねばならないのはそのためだ。

北京=イ・ボルチャン特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 記事入力 : 2023/01/03 18:21
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