国家情報院の対共捜査権もなし…警察移管時に能力低下の恐れ

 北朝鮮の指令を受けて済州に地下組織を設立し、活動していたスパイ団が、韓国のスパイ防止当局の捜査を受けていることが8日までに確認された。今回の「済州スパイ団」容疑の捜査より前のスパイ団事件は2021年8月にまでさかのぼる。 韓国公安当局は当時、「自主統一忠北同志会」組織員3人をスパイ活動容疑(国家保安法違反)で逮捕した。この3人は2017年から北朝鮮工作員と指令文・報告文84件を暗号化ファイルの形でやり取りし、忠清北道(忠北)地域の政治家、労働団体・市民団体関係者約60人に対する包摂(取り込み)活動を行った容疑が持たれた。この事件の捜査は国家情報院が主導したが、検察の段階に移って以降は大検察庁(日本の最高検察庁に相当)が清州地検の検事派遣要請を拒否するなど、「捜査縮小」騒動が起こった。文在寅(ムン・ジェイン)政権は「国家情報院改革を行う」として国家情報院の対共捜査権をなくす法案を2020年12月に国会で通過させた。

 自由民主研究院(柳東烈〈ユ・ドンヨル〉院長)が韓国国会・国家情報院の資料などをまとめた統計によると、文在寅政権時代(2017年-2022年)にはスパイ捜査がほとんど行われなかったことが明らかになった。2011年から2017年までのスパイ摘発件数は26件で年間4件以上だったが、2017年から2020年までの摘発は全体で3人だった。その3人も、朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代に容疑が明らかになり、捜査中だったスパイ事件だという。 2021年に軍事安保支援司令部(現:韓国軍防衛司令部)が国会に提出した資料によると、2011年から2016年までに合計48人の国家保安法違反者が検挙されて韓国軍と検察に送致されたが、文在寅政権時代の2017年から2020年は1件も送致がなかったとのことだ。

 防ちょう(スパイ防止)機関の関係者は「スパイ容疑を証拠で摘発するには長年のノウハウが必要で、長年にわたり資金と人材を投入しなければならないケースも多い」「今年、国家情報院の対共捜査権が完全に警察に移されれば、(スパイ)捜査能力が下がるのではないかと心配だ」と語った。文在寅政権がスパイ捜査にぬるま湯的な対応を取ったため、国家情報院や国家安保支援司令部(旧:韓国軍機務司令部)など対共捜査チームの士気が大幅に下がっているという指摘もある。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足以降、防衛当局では国家保安法違反容疑などに対する捜査を再開したと言われている。

キム・ウンジュン記者


朝鮮日報 2023/01/09 11:15
https://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2023010980033