公的年金の積立金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の投資先に、懸念を示す声がある。米国の証券取引市場で上場廃止となった中国国営企業や、沖縄県・尖閣諸島周辺海域で無断の調査活動に関与した企業、習近平政権の巨大経済圏構想「一帯一路」に関係する企業などが含まれているのだ。自由主義諸国が、中国の軍事的覇権拡大に警戒を強めるなか、岸田文雄政権は現状を放置するのか。元内閣官房参与で産業遺産情報センター長の加藤康子氏に、中国企業への投資のリスクと対策を聞いた。

「GPIFは、米国の証券取引所で上場廃止になった中国企業の株を購入している。米国の会計監査を受けることができず、安全保障上のリスクがあることが上場廃止の理由で、中には中国人民解放軍との関係が深いとされる企業もある。経済安全保障上、そういった企業に日本国民の年金を投資すべきではない」

加藤氏は、問題点の一つをこう語った。

米国市場で中国企業の上場廃止が相次ぐが、2022年8月には、中国国営企業5社が上場廃止になった。中国国営企業である、中国アルミニウム(チャルコ)▽中国人寿保険▽中国石油化工(シノペック)▽中国石油天然気(ペトロチャイナ)▽中国石化上海石油化工―である。GPIFが「2021年度の運用状況」で公表している「保有全銘柄」(22年3月末現在)には、シノペックやペトロチャイナなどの名前があった。

このうち、シノペックは日本の海洋資源にも触手を伸ばした疑いがある。

尖閣諸島周辺の日本のEEZ(排他的経済水域)で13年、バハマ船籍の海洋調査船が、ワイヤを曳航(えいこう)しながら航行していた。事前通告のない海洋調査のため、海上保安庁の巡視船が警告すると、「上海海洋石油局の所属だ」と名乗った。上海海洋石油局はシノペックの傘下にある政府系機関である。

「一帯一路」の問題点である「債務の罠(わな)」に関わっている中国・香港系企業もあった。

インド洋の要衝であるスリランカのハンバントタ港は中国の投資によって整備されたが、巨額の債務返済に窮したスリランカが17年、99年間の運営権を中国企業に譲渡した。事実上、「中国の港」と化したことになり、中国が軍事拠点化を進めるのではないかと懸念されている。

ハンバントタ港の運営権を得た企業が、香港に登記されているチャイナ・マーチャンツ・ポーツ・ホールディングス(招商局港口控股)で、GPIFは22年3月末時点で同社の株を保有していた。

シノペックや、チャイナ・マーチャンツ・ポーツ・ホールディングスの活動が将来、日本の不利益となる恐れもある。

加藤氏は「日本の年金が最終的に日本国民への刃になってしまったら、何の意味もないのではないか」と疑問を投げかける。

以下ソースから
元内閣官房参与・加藤康子氏 2023.2/3 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230203-2X5CSTAOLFN5BL6ZWOFJ6QATHU/3/