インド南部ベンガルールで25日まで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアのウクライナ侵略を巡る意見対立から共同声明の採択は見送られた。
見送りは4回連続で、議長国のインドが代わりに発表した議長総括では、反対した国がロシアと中国だったことを名指しで指摘する異例の措置を取った。
ウクライナ侵略から1年の節目に開かれたG20は、国際社会の「協調」よりも「分断」がより鮮明となる結果となった。

「ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難する」。
25日に発表された議長総括に盛り込まれ、中露が難色を示した文言は、昨年11月のG20首脳会議(サミット)で採択された首脳宣言にも含まれていた。

首脳宣言というたたき台があるため、今回の会合でも共同声明は出せるとの観測が一部であった。しかし、中国とロシアは「地政学上の問題を扱うべきではない」という理由で反対した。
真意は不明で政府同行筋も「われわれも教えてほしいくらいだ」と話す。

通常G20では各国がどういった主張をしたかは明らかにされない。しかし、今回の議長総括で反対した国を名指ししたことについて、
鈴木俊一財務相は「ロシア、中国に対してより強い立場の表現をしたと理解している」と説明した。

G20にはロシアだけでなく、中国など対露姿勢で先進7カ国(G7)とは距離を置く国も含まれる。
そのため、昨年のサミットまで共同声明が出せない会議が続き、先進国と新興国が協調する枠組みとしてのG20は、機能不全を指摘する声は少なくない。

ただ、ウクライナ侵略を背景とする物価高や新興国の債務問題などで世界経済の下方リスクが高まる中、G20が果たすべき役割は少なくない。
今回の会議でも、低・中所得国の債務問題の緊急性を訴え、債務データの共有など、透明性向上に向けた取り組みの重要性について一致するなど、進展もみられた。

一連の取り組みは、中露陣営が関係を強めるグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)を西側陣営に取り込むことにも寄与するとみられ、
共同声明という名を捨ててでも実を取りに行くことは重要だ。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストも「世界が分裂に向かう今だからこそ、G20という対話の場の重要性は増している」と話した。(蕎麦谷里志)

2023/2/26 13:35
https://www.sankei.com/article/20230226-5DALDK2SZFNRHDU4O5MCJCI7N4/